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「…恋愛って難しい」
隊の有志で街に出て、馴染みの店で食事と酒を楽しんでいたヴォルフだったが、一度巣食った想いが拭えず、思わず口からポロリと言葉が出ると
「ヴォルフ、お前、なにを初等学院の生徒みたいなことを」
「まあ、ヴォルフとダリヤ先生ですから」
「俺も昔を思い出す」
「青臭いのは婚約期間だけ、結婚までの楽しみだからな」
ヴォルフの独り言を聞き咎めた周囲が好き勝手なことをいう。
もともとヴォルフとダリヤの関係は隊で話のネタになりがちだったが、二人が婚約した今となっては周囲が先輩風を吹かせてあれやこれやと教えたがった。
ある程度大人になると初等学院生のような青春の輝きは眩しすぎ、多少世慣れた男女のあれこれの方が楽しく突きまわせるのだ。
「ダリヤ先生も多忙だからな。うちの妻に言わせると”御出迎えの準備”があるから、結婚して同じ家に帰るでも先触れがあった方が良いそうだ」
「先触れは大事だぞ。 結婚後にビックリさせようと急に帰ったことがあったが、迷惑だとしっかり叱られた上に飯抜きになった」
「ダリヤのご飯抜きは嫌なので、絶対に先触れを出すようにします」
「先触れなしは『情熱的で良い』と言われたぞ。逢いたくて仕方がなかったのがよく伝わるとな」
「まるで歌劇のようですね」
「花束を持っていくといい。 ヴォルフ、お前ならすごく絵になりそうだ」
「結局どっちが良いのか」
頭を抱えたヴォルフの肩をドリノが笑いながら叩き、
「そもそもダリヤさんに予定があって塔に不在だったら劇も始まらないだろう。 叙爵して一層忙しくなったと評判じゃないか、ロセッティ商会」
「結局はダリヤ先生の多忙が問題か…しかし、隊のことを考えると”ほどほどに”とは言い難いのが辛い」
「ダリヤ先生のおかげで遠征は快適になり、あのスパイスと甘だれのレシピのおかげで家での地位も向上したしな」
「ダリヤの多忙については俺が我慢するので…そんな目で見ないでくれませんか?」
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