親しき仲と礼儀

魔導具師ダリヤ

『魔導具師ダリヤはうつむかない』の二次小説です。

前の二作がシュガーレスの呪いにかかってしまったので、三度めの正直で頑張って妄想しました(ムキになってここ最近の更新が魔ダリのみという事態にも)。

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「『無事に戻りました。予定がなければ明日会いませんか?』、っと、うん、よし」

「お前、未だダリヤさんに先触れ出してるのか?」

自分の書いた手紙を読み返し、過不足のない内容に満足して封をしていると、隣で同じように手紙を書いていたドリノが首を傾げて訊ねた。

「うん、ダリヤにも商会の仕事があるしね」

「まあ、その辺りの匙加減って難しいよな。 結婚して一緒に暮らすようになるまでの期間限定の文通って思えばそれもまたいい想い出になるか」

「ドリノも”彼女”から手紙が来たんだね」

「店の子の代筆かもしれないし、商売の常套手段なんだとおもうけど、『逢いたい』って言われるのは悪い気分じゃないよな」

ほんの少し暗い目をして自嘲的に嗤うドリノの言葉への返事にヴォルフは悩んだが、ふと自分がダリヤに『逢いたい』と言われたことがないことに気づいた。

魔物の出現は突然なので不規則な仕事は自分の方。

一方でダリヤは王都のどこか、緑の塔、ギルド、王城あとはご近所くらいと行動範囲は狭く、予定も大体分かっている。

だから自分が『逢いたい』と、ダリヤの予定を聞くのは当たり前と言えば当たり前なのだけど。

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