真綿と蜂蜜

天は赤い河のほとり

天は赤い河のほとりの二次小説で、原作最後のカイルとユーリの結婚式のあとの物語です。

旧サイトでのタイトルは『女神への供物』です。

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「なぜ終わらない?」

ユーフラテス河の雫ほどの数があるのではないかと疑わしいほどの所管の量にカイルは眉間にしわを寄せる。そんな主君の姿に、新たに書簡を持ってきたイル・バーニは限界が近いことを感じ取った。

国内だけでなく海外諸国の多くで『賢帝』と言われるムルシリ2世が本来の実力で処理すればこのくらいの量の書簡に音をあげることはないが、彼が目に入れても痛くないほど愛でている妻は現在妊娠中の身なのだ。

(皇妃様不足…このまま仕事を続けるより休憩を入れるべきだな)

帝国内の権力争いの終結

カイルとユーリの結婚式

あれから1ヶ月、普通ならば『新婚』と周囲も遠慮するが、二人は皇帝と皇妃。3日3晩の賑やかな宴が終われば仕事も通常モードで始まってしまった。

「ユーリと話したらすぐ戻る」

臣下を信頼している皇帝は鼻歌交じりに執務室を出ていった。主君の嬉しそうな姿に、普段は無表情なイル=バーニの顔にも笑みが混じる。

そんな暖かな視線を動かして、自分の机の上に乗った書簡に向けた目は氷のように冷たい。なにしろこれらは皇帝に側妃をすすめる、自薦他薦の書簡たち。

(どれほどの美姫かわからんが、うちの皇帝に持ち込むとは愚かなことだ)

皇帝の側近ならば誰もが皇帝の瞳に皇妃以外がうつることがないことを知っている。

イル=バーニは部下に命じて机の上の書簡の山を叩き壊すように命じた。

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