天の愛し子

天は赤い河のほとり

「天は紅い河のほとり」の二次小説で、カイル×ユーリです。

原作終了後、デイルが産まれる話です。悲しい結末でしたが、カッシュ×ウルスラも好きです。

原作通りではありますが「流産」の描写がありますので、嫌悪もしくは忌避される方は読まないようにご注意ください。

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「カイル」

頭上から聞こえる名前を呼ぶ声にカイルは顔をあげず、元気に動く腹部から顔を離さない。そんな夫の愛情にユーリは嬉しくなるものの、出産予定日が近づいてきて不安もあった。

「ウルスラのところに行きたいんだけど」

「第四神殿だな、まあ此処から近いし良いだろう。ハディたちに言っておく」

「ありがとう」

ユーリは微笑んだものの、優しく腹部をさする顔が曇っており、カイルはユーリの頬を撫でる。

「何か心配ごとか?」

「この子、ちょっと元気がない気がして」

「そうか?」

腹の中から父の頬を押す子の動きに顔を蕩けさせながら、カイルは器用に首を傾げてユーリの不安を聞く。

「臨月なのにお腹もあんまり大きくならないし」

「十分大きくなったと思うがな」

カイルはくすりと笑い、ポッコリと丸くなったユーリの腹を撫でる。指が柔らかに包まれた平らな時とは違い、肌が張ってツルッとした感触は未だ物珍しい。

「比較できるのがシャラだけだからなぁ」

「確かにシャラの腹はこれよりも大きかったが、あっちは双子だったからな」

母親の血筋だな、と育児に追われる側近の2人を思って笑い

「この子は男かな、女かな」

どっちでも良いからお前に似て欲しい、と言うカイルに心が温かくなるものの、ユーリの頭に浮かぶのは夢の中でウルスラが抱き上げた赤子。

(あの子はカイルに似ていた気がする)

カイルに似た明るい蜂蜜色の巻き毛で、ウルスラの腕の中で可愛く笑っていた、夢の中で一度だけ逢った、姿見ることなく亡くした我が子を思う。

(あれは私の願望だと解かってるけれど)

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