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「そうだ、そろそろ名前も決めないとな」
カイルが思いつくままにユーリの腹の中の子どもに話しかけていると、クスクスと鈴の鳴るような笑い声がカイルの耳に届き、顔をあげると笑いを含む黒い瞳をあけたユーリがカイルを見つめていた。
「妊娠中ってこんなに眠いものなのね」
未だ眠気の残るユーリの黒曜石の瞳にうつる己の姿を見ながら、カイルはユーリを抱き上げて、代わりに長椅子に座った自分の脚に座らせる。
カイルのそんな愛情表現に慣れているユーリは声ひとつあげず、微笑みを顔に湛えながらふわりとカイルの元に舞い降りた。
「娘に甘いお父さんになりそうね」
否定できないユーリの言葉にカイルは苦笑し、今はもう何もついていないユーリの白い首筋をなぞった。ユーリの唇から甘い吐息が漏れ、黒曜石の瞳が『どうしたの』とカイルに尋ねる。
「ここに宝玉を飾ろう。できればお前の全身に」
カイルらしくない豪奢な言葉にユーリが驚くと
「幸せだから…この世で一番キレイなもので飾り立てて感謝を伝えたい」
カイルの言葉にユーリは嬉し涙をこぼすから、カイルは嬉しそうに、少し困ったようにその涙を人差し指ですくう。
最高級の黒曜石よりも深く艶のある黒い瞳は涙に濡れてきらきらと煌いて、この世界一美しい贈り物は神々が遣わした女神イシュタルの化身なのだと実感した。
「私が宝をもらってしまったな…ユーリ、愛しているよ」
この身体
己が存在する意義の全てを賭けて
人間が神様に贈れるものはこの心だけだから
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