主よ、人の望みの喜びよ

のだめカンタービレ

のだめカンタービレの二次小説です(旧サイトにアップしていた作品を移転しました)。

時間軸ではルビーのネックレスを贈ったクリスマスの少しあと、新年を迎える二人のSSです。決定打(告白)の描写がなかったので「両片思い」な「恋人未満」の二人の設定にしました。

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「先輩、そろそろ行きましょう」

雪降る深夜。

結露する窓の外の寒そうな風景に腰が重くなる千秋とは対照的に、

「早く、早く」

のだめはまるで犬のように、目をらんらん、手をぶんぶん振って千秋を呼んだ。

その首元で揺れるのは、真っ赤なルビーのネックレス。

(本当に首輪だな)

今は犬のように従順な風情だが、普段は猫のような気まぐな気質。

追いかけられてうんざりしていた筈なのに、気ままにあっちこっちと飛んでいくのだめを、いつの間にか千秋は自分から追いかけていた。

自分の好みとはかけ離れた女の首、そこにあるのは今まで千秋が誰にも贈ったことがない装飾品アクセサリー

男の所有欲の証しを楽しそうに揺らす姿は千秋の目を楽しませ、そんな自分の変わりようが千秋には面白かった。

「何を笑ってるんデス?」

「犬っころのように楽しそうで結構だが、もう少し温かい格好をしていけ」

首を傾げるのだめに笑って、小言共に誤魔化して、

「…これじゃ寒いでしょうか」

自分の着ている赤いコートを見下ろすのだめの頭の上に手を伸ばし、千秋が玄関脇のラックから取り出したのは、

「うきゃ?」

真っ白なマフラー

「プレゼント」

「ふおおお」

のだめは嬉しそうに目を輝かせ、そんなのだめに千秋は目を細めた。

のだめの奇声が耳に馴染み、「結構かわいいかも」なんて思うようになったのはクリスマスの少し後。

そして実感したのは、自分が『変態の森の住人』に完全になってしまったこと。

「どうデスか?」

「似合ってるよ」

それも悪くないかな、なんて思いながら千秋はにこりと笑い

「汚すなよ」

欧州人用に作られた長いマフラーの端を両手を使って丁寧に結んだ。

「暑いデス」

「外に出れば丁度いいさ」

そういう千秋はいつもの薄手の黒いコート。

一応中は黒のセーターを着ているようだが、白いワイシャツの襟が少しだけ寒そうに見え隠れしていた。

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