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(面白い奴)
ただ手を繋いでいるだけなのに、照れくさそうに俯き少しだけ火照って色づくのだめの頬。
勝手に男の部屋で寛ぎ、あまつさえネットで18禁なサイトさえ見てるのに。
最初は男に慣れているのだと思っていた。
何しろ初めて逢った日にお持ち帰りされたのだから。
(まあ…あんな部屋じゃあソノ気になんてならないけど)
あの惨状を思い出しブルリと震えながら、千秋は隣ののだめを再び観察した。
緊張で潤む瞳に少しだけ千秋の悪戯心が刺激され、繋いだ手の指を絡めるとのだめの体が震えた。
その初々しい反応が千秋には嬉しかった。
(俺も都合の良い奴だな)
今まで恋人にした女性の過去の男を、千秋が気にしたことは一切なかった。
正直なところ、多少世慣れているほうが千秋も気が楽だった。
来る者拒まず。
去るもの追わず。
常に千秋を尊重してくれる大人な女性たち、そんな彼女たちとは真逆ののだめ。
そののだめが好ましくなり、次第に愛おしくなり、今では大事な人。
恋は暴走特急、のだめの前ではいつもの『俺様』も通用しない。
そして、どこかで通用して欲しくないって思ってる。
わがままが嬉しいのだ、「それ」は自分への期待の現れだから。
(おかしなもんだ)
愛しさが芽生えたら、彼女の欠点も愛おしく思うのだ。
(ただなぁ…)
「先輩、音楽が聴こえてきましたよ」
(俺はいつまで『先輩』なんだろう)
少しだけ距離を感じてしまう、『先輩』の呼び名が切なく感じるなんて
(柄じゃねえなぁ…教会になんているせいだな)
自分にそんな切なさを感じさせる、ロマンチックな雰囲気が少し憎かった。
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