主よ、人の望みの喜びよ

のだめカンタービレ

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「…『気紛れ』?」

思いもよらない事をいわれて、ただ音を返すしかないほどに千秋は驚いた。

気紛れでキスするような軽い男とでも思うのかって、千秋は怒りたくなったが

「何でまた泣きそうなんだよ」

(こっちが泣きそうだ)

キスを拒否され、泣かれさえした事実が千秋の心に突き刺さる。

「先輩」

その呼び方が傷を深く抉る。

千秋は天を見上げて深くため息を吐いて、胸に湧いた様々な感情を落ち着ける。

人の気持ちは難しいことを知っていた。

早々に背を向けた父親はもちろん、一緒にいた母親の考えていることも解らない。

歴代の恋人たちも皆同じ。

自分に何を望んでいるのか、何をしたら喜ぶのか、千秋には分からなかった。

「もういいや」って、いつもなら此処で投げ出してしまった。

でも今回は諦めきれない、「知りたい」と千秋は感じているから

「のだめ」

優しく労わる様に名前を呼ぶ。

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