その毒林檎、食っちゃえYO!

スキップ・ビート!

スキップ・ビート!の二次小説です。

蓮×キョーコで、二人は原作46巻くらいの関係、そしてスキビ初期の松内瑠璃子が登場します。

タイトルは原作46巻の表紙からです(こちらは多分『アダムとイブ』)。

白雪姫の姫と王子を現実で考えると「ないない、お断り」と思うため、キョーコたちに代弁してもらいました。

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「キョーコ、松内さんが来てるんだけど」

「はーい?」

ラブミー部の仕事で知り合って以来、キョーコは松内瑠璃子と仕事仲間以上親友未満で付き合いを続けていた。

「久しぶり。忙しいのにごめんね、直ぐに終わるから」

「気にしないで。 でもお互い忙しくて良かった」

「本当に。で、本題」

挨拶の通り余計な話をせずに、瑠璃子はキョーコに白い紙袋を渡す。

「新作のコスメなんだけど、あなたこういうの好きでしょ?事務所経由で渡しても良かったんだけど、一応スポンサーとの兼ね合いとかあるしね」

「コスメなら大丈夫、あ、これCM見たよ」

「開発からかかわっている奴だから、良かったら周りに宣伝しといて」

「コンセプトは『白雪姫』かぁ…ドワーフは好きなんだけどなぁ」

「意外、白雪姫が嫌いなの?まあ、私も嫌いだけど。寝ているだけで王子様って何?しかも王子、女の外見しか知らないのに結婚?ついこないだ『君って見た目と違うんだね』ってふられたばかりよ、こっちは」

「危機管理も自己防衛もできない姫って大変だよね。そんなのでも王子と結婚したらゆくゆくは王妃、『ドジしちゃった』で外交問題ばんばん起きそう」

「まあ、若い二人だもん。そこまで考えないで求婚してんでしょ。私ならいくら顔面偏差値高くても嫌だわ」

「結婚もあると男性より女性の方が理想像が現実的、シビアだよね」

「男性より女性の方がロマンチストなのよ。君は僕の理想とか平気で言うし」

「元カレ?」

「元カレも、その前もよ」

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「こんばんは、社さんからの依頼で御食事を作りに来ました」

「ありがとう。 聞いているよ、上がって」

いつもの笑顔でついっとスペースをあけ、部屋に招い入れる蓮にお辞儀をして中に入る。

「…ありがとう、君も疲れているのに」

「いいえ、私も食事はしないといけないのでご一緒させてもらおうかと」

「それは嬉しいな」

蓮の疲れた表情に「ありがとう」の意味がご飯だけではないとキョーコは思ったが、これ以上踏み込むことではないと気づかなかった振りをする。

蓮には蓮の、キョーコにはキョーコの目標ゆめがある。

  - 彼氏を名乗れる権利が欲しい -

あの日キョーコの手に落ちてきた林檎は魅力的ではあったが、お互いに見たことだけを覚えてリンゴは木に戻すことにした。

あのとき林檎を食べていたら、アレの毒がキョーコを一気に飲みこんでしまっただろう。

あの林檎がもう一度落ちてくるのか、いつ落ちてくるのかは分からない。

だけどキョーコはその「いつか」に備え、毒を浄化できる力を持たなければいけないのだ。

「簡単なものですが、消化にいいものにしたのでしっかり食べて下さいね」

「ありがとう、美味しそうだ」

(手がかかるって意味では、私も敦賀さんもお姫様体質なのかも。毒を喰らっても眠りについても、子の顔なら王子様候補がたくさんきそう)

「…なに? じっと見られると流石に食べにくいんだけど?」

「ああ、すみません………敦賀さん、もしそのご飯に毒が入っていたらどうします?」

「”犯人は最上さん”って書き残しとく」

「食べるんですか? 白雪姫じゃないのですから、もう少し疑った方が良いかと」

「ああ、白雪姫からこんな物騒な話になったわけね」

「はい。 敦賀さんが白雪姫なら王子候補も一杯群がるだろうなって思って」

「何で俺が”白雪姫”なのかな? プリンセスといえば最上さんの方なんじゃないの?」

「いえ、白雪姫は顔面偏差値が必要なんで」

何それ、と蓮が笑う。

その素に近い、さっきまで蓮を包んでいた淀みのような毒素が無くなっていてキョーコはホッとする。

そんなキョーコの様子に、心配かけたことを恥ずかしく思いつつも蓮の心が温かくなる。

「俺、前も言ったけどそんなに分かりやすい?」

「ああ、今回はそんな、ベッコーーーンって感じじゃないですよ?」

「うん、ちょっとベコベコッって感じかな。ちゃんと栄養摂取したから明日から頑張るよ」

「お役に立てたなら良かったです」

「御馳走様でした」と食事を終えたキョーコは、お茶を淹れるといって立ち上がる。

そんなキョーコの肩に蓮は手を置いて、座っていた椅子にキョーコを戻す。

「お茶くらい俺がいれるよ。お姫様だって少しは役に立たないとね。せっかくだから、コーヒーじゃなくてアップルティにしよう」

「紅茶…缶しかありませんでしたが、大丈夫ですか?」

「まあ…毒林檎になることはないだろうから」

結局、蓮の淹れたアップルティは毒にはならなかったが、絶妙な渋みに「マウイ…」と二人は呟いたとさ。

その毒林檎、食っちゃえYO!

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