スキップ・ビート!の二次小説で、蓮×キョーコ(蓮キョ)です。
2020年13・14号の『誓い』をみて、2人の結婚式を妄想してみました。
キョーコの名前は出てきますが、当時蓮の名前が何になっているか分からないので名前は伏せてあります。
スポンサードリンク
病める時も
健やかなる時も
共に在る事を―
選ばれし男女が神の御前で誓う儀式で聞く文言にキョーコの口元がふよよよと笑みの形に歪んだ。
『何か』を思い出しているのか瞳を愛し気に細めるキョーコに、その向かいに立っていた男は愛情100%の瞳を向けて
「何か幸せなことを思い出した?」
キョーコの『誓います』という凛とした声を満足いくまで反芻した後に、優しい笑顔と共に問いかけると
「この言葉を聞くのは2回目だな~と思って」
ふふふ、と楽しそうに微笑むキョーコとは対照的に、男の整った美貌な顔がピキリッと音をたてて固まった。
- あの瞬間、魔王が降ってきた -
男の脇で付添人をしていた社はのちにそう語った。
(いまは俺のお嫁さん、俺の奥さん、唯一無二の俺の妻……彼女にとっても俺が最初で最後の旦那様)
お色直しでキョーコが先に披露宴会場を抜け、そのあとに会場を抜けた男は与えられた控室で悶々と自分に言い聞かせていた。
専属モデルを務めるブランドが手掛けたタキシードを均整のとれた長身にまとい、教会に洗われた男はその場にいる多くの者に羨望のため息を吐かせた。
それなのに。
いまの男にその優雅さは微塵もなく、男は頭を抱えてしゃがみ込み、きれいに磨かれてはいるが床に向かって『俺だけのお嫁さん』を呪文のようにひたすら繰り返していた。
「で、俺が呼ばれたってわけか」
ものすごく嫌そうな顔で控室に入ってきた尚は、神速で伸びてきた腕に胸ぐらをつかまれて更に嫌そうな顔になる。
「いますぐ吐けっ……いや、速やかにその記憶を抹消しろ。できないなら抹消してやる」
「あんた…憑き物とれて一層物騒になったな」
心底呆れた声で返したものの、至近距離にある男の血走った目は真剣(マジ)だった。尚が『結婚は当分ごめんだ』と思うのには十分だった。
「“それ”は俺じゃねえよ。そりゃあアイツは昔から『ショーちゃんのお嫁さんになる』って言っていたけどよ…って、ガキの戯言に殺気を飛ばすんじゃねえよ」
「夏の京都で彼女にそう言われたのを思い出した……彼女はお前のお嫁さんになるって、だから俺にはキョーコ“ちゃん”と呼べと」
「あいつは昔っから義理堅いというか古臭いというか…ちょっと待て!!」
満更でもなさそうな尚の顔にイラッとした男は拳を強く握り、喧嘩の態勢に気づいた尚は慌てて男を制止する。
「物騒な奴だな…ガキの頃の可愛い想い出だろうが」
「自慢か?」
「自慢じゃねえよ! ただアイツは昔っから超がつく真面目だからな。ガキの遊びでだって“誓いの言葉”なんて言わねえよ。神様の前で交わす神聖な約束だとか言ってな」
「じゃあキョーコには将来を真剣に誓った相手がいたってことか!?俺以外に!?」
噛みつく男に尚はげんなりした。
尚にも聞こえた。神の前で誓いを交わす最中にキョーコが囁いた「2回目」という言葉。
(恋は盲目というか…鈍感というか…)
あのときのキョーコの幸せそうな笑顔。天真爛漫な少女の笑顔なら尚にも見せたことがあるが、女の顔でキョーコが微笑む相手はいまも昔もただ1人。
「仕方ねえ、祝い代わりだ。1回目もお前だろうよ」
「…あ」
「……思い出したようだな。よかったな、『忘れた』なんていったらアイツ泣くぞ。下手したら離婚騒ぎだぞ」
「ありがとう……その、助かった」
ふんっと鼻で笑った尚が控室から出ていくと、男は安堵でずるずるとその場にしゃがみこみ息を吐いた。
「“あのとき”か…ああ、うん、言ったわ、俺」
忘れてたなんて最低だ、と男は今度は別の要素でうなだれた。
END
コメント