スキップ・ビート!の二次小説です。
蓮とキョーコは恋人同士で、キョーコは蓮が「クオン」だと分かっているが日本では「蓮」のままという設定にしています。
年齢を重ね女子高生の心の機微が書けなくなったので、キョーコが20代半ば~後半くらいのイメージでいます。
自動的に蓮はアラサーもしくは30代になりますが、男の渋みが出る年齢ということでご容赦下さい。
機会やチャンスを逃すことを「slip away」というので、このようなタイトルにしました。
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「懐かしい映画をやっているね」
撮影で汗をかいたから、と会いに来た恋人に断りを入れてシャワーを浴びた。
紆余曲折を経てようやく恋人になれた二人だから、時間が惜しいと濡れた髪から未だ雫がたれる状態でリビングに来たら恋人は映画に夢中だった。
キョーコはソファの上でじっと動かず、その髪に結ばれた薄水色のリボンだけがエアコンの風に揺れていた。
「敦賀さんも見ませんか?」
「あまり自分の出た映画を見るのは好きじゃないんだよね」
昔のなら尚更だ、とテレビ画面に映る自分の、まだ10代の若い顔に苦笑する。
気は乗らなくてもキョーコのお願いは無碍にできず、蓮はキッチンでコーヒーを淹れ自分の黒いマグと揃いの紅いマグをキョーコの前に置いた。
「何歳のときのやつですか?」
「確か…19になって直ぐ、かな」
「いまの私より年下なんですね。 ふふ、ちょっと変な感じです」
未だ幼さの残る自分と向き合うことは、この世界にいればいればよくあることだった。
しかし今日は恋人が隣にいて、彼女より年下の自分を見るのが少々照れ臭かった。
映画のことなら台詞の端々まで覚えている。
しかし、これを撮ったときの自分がどんなだったかなどは覚えていない。
ただこの頃は我武者羅に『成功』を求めていた。
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