スキップ・ビート!の二次小説で、蓮とキョーコは恋人同士の設定です。
先日発売した45巻と花とゆめ(8号、10・11号、12・13号)の影響を受けて作りました。本サイトのスキビ作品は原作と合わなくなってきました……とりあえず!今回は今後の展開に影響を受けないと良いなぁと思っています。
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スリスリ
スリスリ
右手の小指を労わるようにスルリと撫でられたキョーコは気持ちよさそうに目を細める。特に目的なくキョーコの指先をなぞる蓮の長い指にキョーコは毎度見惚れていた。
「敦賀さんのクセですよね」
「んー?」
生返事にキョーコはムッと唇を尖らせて、お仕置きとばかりに蓮の大きな手から自分の手を抜く。ぼんやりとしていた蓮はハッとして、申し訳なさそうな顔をするものの
「で、何だっけ?」
オモチャを取り戻すように、些か力を込めて再び蓮は自分の手の中にキョーコの手を取り戻す。
スリスリ
スリスリ
先程と違って意志をもった指の運びは優しくも力強い。
「メイクしたいので左手にしてくれませんか?」
もう1本小指はありますから、とひらひらと左手を振ってみる。摩擦なのか、誘う様な蓮の指の動きなのか、熱くなった小指が小恥ずかしくてキョーコは取り戻したかった。
「ダーメ。キョーコの潜在能力も表現力も俺のもの」
「…何ですか?」
「だって、今回の仕事でまた君の熱狂的な贔屓(ファン)が増えるだろう?まだ見ぬ好敵手(ライバル)の芽は早めに摘まないと」
何言ってるんですか、と可笑しそうに笑うキョーコに微笑みつつも蓮の内心は呆れる。何しろ今回は恋愛ドラマ。キョーコに脅威するヒロインは周辺に多大な影響を与え、恋愛関係になる男はキョーコの役に引きずられ、現実に戻って来ても燻る想いを昇華しきれずキョーコに寄せる。
「ヤキモチですか?」
「はい、ヤキモチです」
素直な蓮にキョーコはクスクス笑う。
まるで小さな子どものように自分の感情を御せずヤキモチでキョーコを傷つけた過去があるからか、蓮は素直に自分の感情を認める。そんな蓮にキョーコの心はキュッと掴まれて、仕事に行かないといけないと分かっているのに燻る甘い熱がキョーコを蓮の腕の中に留まらせる。
「仕事に行かなきゃ」
「そうだね、仕事に行かせてあげなきゃ」
自分を納得させるように2人は声に出して、同時に笑う。
先に手を離したのは蓮の方。甘い束縛がなくなったことに寂しさを引きずりつつもキョーコは仕事に行く準備をするべき義務感に押されて動こうとしたら、まるで”あのとき”を彷彿させるように蓮の長い両腕がキョーコの体を閉じ込める。
”あのとき”と違うのは至近距離にある蓮の表情。
あのときは驚いてつい大声を上げてしまうほど必死な表情だったけれど、今目の前にあるのは甘く蕩けた表情。どちらも心臓に悪い破壊力。
「あーあ、このまま君を未来永劫閉じ込ておきたいな」
「芸能業界は目立ってなんぼの世界なんでしょう?」
「そんなことを言った過去の俺を殴りたい」
楽しそうにクスクス笑うキョーコに蓮は優しく笑い、コツンと自分の額をキョーコの額にあてる。痛みはないがグッと縮まった距離にキョーコは身を竦ませる。
「可愛い」
あの日は先輩後輩の関係を続けると決めていたから額を合わせてしまいにしたが、それぞれ目標(ゆめ)を叶えて手を取ったいまはここでやめる理由はない。
「いつもどこに居ても俺の心は君のものだよ」
「その台詞…私の宝物なので頻出させないで下さいよ」
目が腫れたら仕事に行けない、といいつつも涙で潤みだしたキョーコの瞳。
そんなキョーコに蓮は優しく微笑みかけて涙を唇で吸い取ると、そのままキョーコの唇に口づける。
あの日は確約できなかった未来が今は現実だった。
チュッ
軽いリップ音を立てて唇が離れると、まるでタイミングを計ったようにお互いの瞳が目に飛び込む。
「どう?仕事行く気なくなった?」
「…絆されませんからね」
「毎回毎回オフのたびに」と呆れるキョーコの瞳が終了の合図。
「残念」と、本音3割で呟きながら蓮は腕の檻の扉を開ける。スルリと得物が逃げると残り香だけが蓮の腕の中に残った。
END
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