スポンサードリンク
「なーに、笑ってんだ?」
吸い終えたタバコを灰皿に押し付けながら、獠は思い出し笑いをした香に首を傾げる。
「せっかく七夕なんだし」という理由にもならない理由で帰宅早々に香をベッドに引っ張り込み、さっきまで情事の余韻で香は呆けていた。
「さっきの『財布はひとつ』ってやつ…あまりに自然で夫婦みたいで、曲がりなりにも恋人なんだなって思ったの」
「曲がりなりにも? ”こういうこと”してるのに?」
「これで恋人なら……あんたの過去が気になるんだけど?」
「何のことだ? 俺は牽牛のように真面目な男だぞ?」
「真面目な男は天帝の怒りをかいませーん」
「恋に浮かれれば真面目も吹っ飛ぶ。 よほど織姫が良い女だったんだろ」
分かるなぁ、と言いながら香の蠱惑的な腰をすりっと撫でる。
身の内に燻っていた熱が弾けて、香は甘い声を上げた。
「よし、休憩終わり。 もう一回戦、いくか」
「行くか! こっちはさっきまでのでヘトヘトなのに」
「情けねえなあ、それじゃあ織姫たちに負けちまうぞ。一年ぶりなんだ、今夜は夜通しに決まってる」
「童話をいかがわしくするな!」
「それが男だ」
はいはい、と呆れたように返事しながら香は薄い羽毛布団で体をガードしながら
「私は白鳥が迎えにくるまで寝ることにする」
「人の恋路を邪魔する白鳥なんて…打ち殺すしないな」
「童話を物騒にするな」
「餓えた男の本気を甘く見ちゃいけねえぜ」
「いや、あんたは餓えたどころか普通に昨日も…おかげで私の体力タンクはすっからかんです」
「この牽牛は夜が明けても川の向こうに去る予定はねえから、朝になったらお前の手となり足となりしっかりとお世話させていただきます」
「心配するな」と良い顔で笑う獠に、香の頭に浮かんだのは川を去っていく渡し船だった。
コメント
冴羽さんの思いの変化と夜の2人の会話が素敵です。読ませていただきありがとうございます。
嬉しいコメントありがとうございました。
イベントも始まりましたので、ぜひご参加下さい(匿名で参加可能です)。
naohn