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「足元にお気をつけて」
「ありがとう」
手を取ったユーリの体が揺れるたび、カッシュはハラハラしてハディに大丈夫か聞かずにはいられない。
「ユーリ様は大丈夫なのか? そろそろ生まれるのだし宮殿にいた方が」
「全く殿方はこういうとき役に立たない」
姉妹の出産を経験したからか肝が据わったハディたちはカッシュに呆れ、
「ちょっとは動いた方が良いのよ」
「そうそう」
スタスタと歩き始める女性たちの背を見送りながら、女は強い、とカッシュは改めて感心しながら
(ユーリ様が来て下さったぞ)
神殿の中で眠る最愛の女性に心の中で話しかけ、馬車に乗せていた花束を持ってユーリたちの後を追った。
「ユーリ様」
3人の高位の神官が低頭しながらユーリを出迎え、ユーリは持参した献品を渡しながら神殿の水場に集まる人たちに首を傾げた。
「あれは何をしているの?」
「ユーリ様が頻繁にご参拝してくださるゆえ、この神殿は妊婦やその家族に人気なのです」
聞けばユーリの様な子になるように、とそんな願いを込めて泉の水を持って行くとか。
「ユーリ様はこの地の生き女神ですので」
「ウルスラ様もすっかり神格化されているんですよ」
笑うカッシュに神官の一人が「ほら」と指さした方には”ウルスラ”と書いた粘土板を掲げる初老の女性。
「”子を護る者”、出産を助ける産婆に特に人気なのです」
「ウルスラが、ねぇ」
華やかで艶やかで、若くして逝ったためカッシュの中の彼女はイキイキとしていて。そんな彼女が老女に祈られることに、内容はどうあれ納得できかねる表情をするだろうと想像できてカッシュは笑った。
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