“さよなら”の唇

ガラスの仮面

ガラスの仮面の二次小説で、真澄とマヤは恋人同士ですが公にはできていない状態です。

EXILEのATSUSHIさんがカバーした「最後の雨」がイメージソングです。

※「最後の雨」のオリジナルは中西保志さんです。

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「マヤさん、いま恋してる?」

亜弓に誘われた少し遅い時間のランチ。

ふたつ返事で了承したマヤは亜弓おすすめの隠れ家レストランに来ていた。

「恋?」

「そう、恋」

なぜ亜弓からそのような話が出たのか。話はここに来たところからに戻してみる。


「マヤさん、ここよ」

「亜弓さん、久しぶり」

時間を無駄にしない亜弓らしくお店の入口で待ち合わせ。演技以外の常識にやや不安があるマヤのため、亜弓はマヤのマネージャーに今日の予定と店の場所を伝えておいた。

「寒くなって来たね」

「今日は夕方から雨になるそうよ」

天気の話をしながら席に案内され、

「えっと……何とかのテリーヌと…何とかと何とかのティラミス」

「マヤさん…『何とか』が多過ぎるわ」

目の悪い亜弓を気遣ってメニューを読み上げ始めたが、しどろもどろで伝わりさえしない言葉に亜弓は苦笑する。そんな2人に亜弓が信頼おくウェイターが手を貸した。

「チョコレートケーキとチーズケーキ…悩む」

 「かぼちゃのプティングも美味しそうよ」

スイーツの話へと展開して亜弓は首を傾げる。

「これが世に言う”ガールズトーク”なのかしら?」

「かな。こういうの、私は初めてだから解からないな」

「あら、劇団の仲間と話をするでしょ?」

「みんなで集まると演技の話だけだよ。亜弓さんの方は?」

「私ってあまりプライベートの話をふられないの。そういう話をしないって思われているんでしょうね…まあ、正直わからないんだけど」

「女子力ってやつが私たち欠けてんだね」

「そうね。芸能界って華やかに見えるけど実態なんてこんなもんよね」

自分にダメだししながら二人は顔を見合わせて笑ったところで亜弓が振ったのが冒頭のセリフ、「恋してる?」だ。


女子トークの王道というべき恋バナの出現にマヤは驚き反応に困っていると、それで察しがついた亜弓はクスクスと笑う。

以前のマヤなら即時否定だっただろうに、返事に困ったということはそういうことだと敏い亜弓には容易に想像がついた。

「当たりね」

「あ、うん」

にっこり笑ってマヤの頭の中が整理されないうちに亜弓がタイミングを狙って問いただせばアッサリ肯定。肯定した後しばらくしてマヤは慌てる。

「やっぱり……相手は…桜小路君じゃないわよね」

「…桜小路君?」

何で?と言わんばかりのマヤの顔に亜弓の頭には桜小路に対する同情を感じ得なかった。

同時にこんなに色恋の疎いマヤが誰を好きになったか気になった。

そしてその気になった亜弓には、素直のマヤから情報を根掘り葉掘り聞きだすことなど容易なことだった。

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