ガラスの仮面の二次小説で、真澄とマヤは恋人同士です。
オリジナルキャラクターが出ているので注意して下さい。
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「真澄様、色ボケも大概にしてくださいませ」
水城は我慢の限界だった。
社長という重職にあるので溜息の1つや2つまでは赦す、が流石に数えるのもイヤなくらいため息を吐かれると呆れと苛立ちしか湧かない。
真澄の溜息の原因が仕事ならば水城だって大目に見る。そこまで鬼ではない。
しかし真澄の溜息の原因…というか、そもそも真澄の頭99.9%はやっと手に入れることが叶った可愛い恋人マヤのことで占められているのは分かっている。自ずと溜息の原因もマヤだと、嫌でも推測できるのだ。
「水城君」
水城だって2人の恋を応援していた。
特に不器用で、それでいて紫のバラの人なんて回りくどいやり方で好きな人をサポートする真澄の恋をサポートさえしていた。だから最初の頃は恋の成就を悦んだ。しかしすでに喜びも色あせている。
「マヤのことで悩むも結構ですが早く仕事は片づけて下さいませ」
そう言いながら水城は持っていた大量の、広辞苑?と思われるくらいの厚さの書類の束を『未採決』と書かれた箱に入れ、隣にある『採決済』と書かれた書類を取り出してその薄さにため息をつく。
「コーヒーをくれないか」
「飲み過ぎは良くないので、三時間ほどしたらお持ちしますわ」
「いま20時なんだが?」
「では23時ということになりますわね」
「それまで働けと?」
「まあ、社長に働けなんて言えませんわ。ただその書類は今日までですの」
「…電話があるんだが」
「あの子は今日23時上がりの予定ですわよね」
丁度よろしいこと、と水城はコロコロ笑いながら去っていく。
万が一その時間までに目の前の書類が処理しきれなかったら「ごめんなさいね、まだ仕事中なのよ」とでもマヤに言いかねない。
「あの子のことだから邪魔しちゃ悪いと遠慮するな」
そんな謙虚な態度も愛おしくて堪らないが、遠慮なくマヤからの電話を切る水城を想像した真澄はゾッと背筋を震わせ、そんな未来にならないように仕事に集中することにした。
カタカタカタと分厚い扉越しにキーボードをたたく音が聴こえた水城はにっと笑い、「やっぱりニンジンは必要ですわね」と机の上の卓上カレンダーを見る。
現在真澄の目に入れても痛くない恋人は地方ロケ。
数日東京を留守しているので真澄も早く帰りたがることはなく、これを機に水城は真澄の予定を朝から晩までびっちりと詰め込んでいた。
「シンデレラは一生懸命働いたから王子様が来たんですのよ」
この場合は天女様ね、と都合の良い解釈をしながら水城は休憩用の温かい紅茶を口にしホッと息を吐いた。
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