美少女戦士セーラームーンの二次小説です。
未来の妄想で、ちびうさが小さい頃のまもうさ(エンセレ)と四天王×四戦士です。
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「もうすぐ1歳か」
そんな呟きに衛が振り返ると、衛の妻・うさぎがベビーベッドを覗き込んでいた。ベビーベッドの中では白いベビー服に身を包んだ赤ちゃんが眠っていた。この国の王女であるスモールレディ、通称「ちびうさ」だった。
「この子って”ちびうさ”だけどあの”ちびうさ”じゃないんだよね」
「…そうだよ」
”あの”ちびうさはあの子だけで
”この”ちびうさはこの子だけで
未来は幾重にも分かれていて、誰かが何かを選択するたびに違う未来が生まれている。あの未来とこの未来が違うのはそういう理由。
「理解するまでの一年かかったなぁ」
「君にしては理解が早かったと思うけれど?」
皆で私を馬鹿にするんだから、と膨れたうさぎの目元に滲んだ涙を衛が拭うと
「ちょっとだけだから」
「……ん」
衛は小さく頷くとうさぎの身体を優しく抱き締めた
「愛しているよ、どんな未来が来てもこの想いは変わらない」
「私も…これまでも、これからも、ずっとずっとあなただけ」
「「my only Valentine」」
二つの吐息が混じり合い
そっと唇が重なった
「……なんてシンミリしてたのがバカみたいよね」
「「「賛成」」」
美奈子の言葉に他の内部戦士たちが頷き
「遺伝子ってものを軽く見ていたな」
「「同感」」
はるかの言葉にみちるとせつなが頷き
「リトル・ちびうさちゃんってことだね」
ほたるの言葉に、その場にいた全員の目が3歳に成長した子どもに向かう。”リトルチビうさ”ことスモールレディは、どうみても過去に出会い同じ時を過ごしたあのときの性格をしていて
「パパ パパ パパ パパ」
「何だ?」
抱っこ、と愛娘にせがまれて嬉しそうに娘を抱きあげる衛と
「いい加減に『パパ』以外言ったらどうなの?」
「ブー」
娘と本気で言い争いをするうさぎ。目の前の子の光景はまるで”今は昔”となった過去の再現だった。
「クイーンがすっかり”うさぎちゃん”に戻ったわね」
「クイーンの威厳なんて全くないわ」
困ったものだと頷き合う四人の側近に、それぞれ傍にいた四天王たちが苦笑するから、”何よ”と問うような視線を四人の女性は同時に男性に向けた。
「だって…プリンセスが生まれたときは大騒ぎだったくせに」
「”ちびうさじゃない”とか言っていたよな」
「大体新生児と14歳の少女が同じわけないだろうが」
生まれたばかりの赤子が10代の少女と同じだったら吃驚だ、と呆れきったクンツァイトの言葉に美奈子のこめかみがピクッと揺れて目が吊り上る。
「あんたと違って情緒とか感傷があるの!」
「それなら想像力もつけとけ」
クンツァイトの言葉に憤慨し、いまにもチェーンを出そうとする美奈子をレイと亜美が止める。そんな美奈子をフンッと鼻で笑うクンツァイトの肩をネフライトが笑って叩き
「全く、お前も素直じゃないよな」
「…何を言っている」
「ビーナスが元気になって良かったじゃんってこと」
なあ、とウインクするネフライトにまことが苦笑だけを返すと、その耳にトテトテと近づいてくる可愛い足音が聞えた。次の瞬間、足に軽い衝撃が響く。
「ウピター、ごはんたべたい」
「はいはい」
“ まこちゃん、今日は何を作るの? ”
キラキラ目を輝かせて見上げる姿は”あの”ちびうさ。二人の娘である限り、決して消えない過去に出会った少女の面影。
「それじゃ行くか、プリンセス」
お菓子だけじゃ物足りなかったんだな~、とネフライトがスモールレディを抱き上げようとするとスモールレディはじたばたと暴れて抗って
「やー! エーオス!」
「……全く、クイーンに似て正直だよなぁ」
苦笑したネフライトが小さな身体をおろすとピンク色の塊はエリオスに突進し、そんな少女を慣れた仕草で抱き上げたエリオスはにっこりとほほ笑みかけて
「それじゃあ行きましょうか、小さな乙女」
「あい!」
いそいそとエリオスは幼子を抱いて行き、その後をまこととネフライトが付いて行った。
「私の知る運命の恋も残りあと一つか」
よいしょ、とほたるが席に座る。さっきまでスモールレディの相手をしていたほたるの肩に労わるようにはるかが手を置き、隣ではみちるが優雅にカップに紅茶を注ぐ。
「過去から続く恋心、か」
「それは侮れないわね」
良い例がそこにいるしな、とはるかは衛とうさぎを指出す。それは昔、月のお姫様が地球に降りて地球の王子様に逢うことから始まる。あのとき王子様が泉にいたのは偶然だけど二人の出会いはかけがえのないものになり、その恋物語は時を超えて現在まで続いている。
「でも…エリオスとスモールレディってすごい年の差よね」
「それは私たちも同じじゃない?」
レイの言葉に亜美が首を傾げると、意識だけとはいえ太古の昔から生き続けているジェダイトとゾイサイトが苦笑する。そんな会話を聞いた美奈子は鬼の首をとったようにニッと笑い
「そうか、あんたってもうかなりのお爺さんなのね」
「何百回か骨になっていてもおかしくないくらいな」
「……笑えないわよ?」
「笑わせるつもりはない。ただの事実だし、お前がいなければとうに骨になってた」
しれっと愛を囁くクンツァイトに美奈子が頬を染め、そんなふたりのやり取りに
「今日もクンツァイトの勝ちね」
「賭けにならないな」
みちるとはるかは笑う。二人の艶やかな笑い声に誘われたように風が吹き、空を仰ぎ見たはるかは心地よい風に目を細める。いくつもの想いが作り上げたこの未来を、独りだったときは想像さえできなかった。
大好きな風に混じるのは大事だと思う仲間と何よりも大切な主の笑い声。幸せを噛みしめたはるかは目を閉じてみちるの肩に頭を預けた。
END
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