シンデレラなんて柄じゃない

四天王×四守護神

美少女戦士セーラームーンの二次小説で、クンツァイト×美奈子(ヴィーナス)です。

四天王はクリスタルTOKYOができて復活した設定です。

旧題は「銀の色」でしたが、シンデレラのようなシチュエーションがあるのでタイトルを改変しました。

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「何でこんなに寒いわけ!?」

「ここはTOKYOよりも高緯度だからな」

「何であんたは寒くないわけ!?」

「寒いに決まっているだろう?」

馬鹿なのか?、と呆れた幻聴がクンツァイトの視線から聞こえ、美奈子の悪かった機嫌がさらに悪くなる。普段周囲に見せる、アイドル然とした愛想の良さは皆無だ。

『クンツァイトと調査してきてね♡』と楽しそうな目をしたうさぎの声を思い出し、その言葉の語尾の♡の意味を振り払いたくて美奈子はあたりを見渡した。

北欧の風景と言われたら多くの人がこうイメージしそうな、程よい規模の雪に包まれた白い街。

「何が楽しくてこんな街をあんたと」

「モダンで良い街じゃないか?」

「『ロマンチックな街』だから文句言ってんのよ、街並に文句を言っているんじゃないわ。さっさと調査して帰るわよ!」

遠回しに”連れに文句がある”とクンツァイトを非難して、歩幅を拡げて美奈子がクンツァイトとの間に距離を取る。揺れる金色の長い髪が粉雪舞う冷たい風で踊る。

”寒い”と喚く主人の意思を無視してその金色の髪は冷たい空気が気に入ったのか。それとも雪の精が金色の髪を気に入って遊んでいるのか。

白地に金糸が気まぐれな線を描く、なんとも見ていて飽きない風景だとクンツァイトは思った。

(そんなことを言ったらまた馬鹿と罵られるな)

この街の空気にあてられたのか、比較的現実的な自分の珍しいファンタジーな思考。普段の無表情を少しだけ緩めたクンツァイトが足を速めて美奈子の隣に並ぶと、

「何で隣に来るのよ!?」

「別にお前が先に行っても構わないが…言葉、解るのか?」

クンツァイトの指が示すものを、美奈子は首を巡らせ目で探す。そこにあるのは見慣れない文字で書かれた、おそらく標識と思えるもの。

「日本語じゃないことくらい判るわ」

「中国語でもないな」

「当たり前でしょ、アルファベットの新種みたいなやつだもの。 んもう!なんで英語じゃないのよ!」

ダンッと音がしそうな勢いで足を踏み鳴らし、美奈子は勇ましくズイッと標識を指さして英語じゃないことを文句いう。「英語なら分かったのか」なんて言ったら金色の怒髪がさらに天を突くと思い、懸命にもクンツァイトは黙っていた。

もちろん呆れていたところもある。

「で?」

「何だ?」

「だから、どっちに行ったらいいのよ!あんた、解読できるんでしょ?」

「ここは異世界のダンジョンじゃないぞ? 貸してみろ」

それなら先ほどまで何処に向かっていたのか、こんなことを思ったが賢明なクンツァイトは沈黙を維持し、差し出した手に置かれたタブレットを見る。周囲を見回して現在地を把握、画面上のマップに付いた観察点☓の方向を見極める。

「こっちだ」

「何で解るわけ?」

何で理由をどう言っても美奈子が怒りそうだったのね、返事に困ったクンツァイトは黙って先を歩くことにした。

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