Happy Endの、その先は?

シティーハンター

シティーハンターの二次小説で、原作終了後(奥多摩後)のリョウ香です。

物語のイメージはピロートークですが、事後なので特に年齢制限はしていません。

寝物語をせがまれた獠は香に「Happy Endの先にあるもの」について問いかけます。

童話によくある「めでたし、めでたし」の先はどうなっているのでしょうか。

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疲れているけれどいつものように眠りに落ちれず、香は獠に寝物語を強請った。

脱力してとろんとした顔で強請ったのが功を奏したのか。

「何を話せばいいんだ?」と乗り気ではないもののやや許諾気味な獠に「童話でもいいわ」と揶揄う気持ちで香は強請ったのだけど。

「そうして王子様とお姫様は仲良く暮らしました」

うーん、と渋った獠が口に出したのが冒頭のセリフ。

それは世界共通の童話の〆の言葉。

「いきなり終わり?」

「うんにゃ、話はここから。童話のよくあるこの終わり、どう思う?」

「ハッピーエンド…で良かった、じゃない」

『何を言っているのか』と言わんばかりの表情の香に獠は呆れた目を向け、理解が足りない香を責めるかのように首を左右にゆっくり振った。

「俺が言ってるのはその先の話。手に手を取って見つめ合って?そんでキスして?で、そのあとは?」

「…結婚、とか?」

「いやいや、そういう法律とか制度の問題じゃなくって、もっと男と女の生物的な本能の話よ」

よいしょっ、といいながら獠は姿勢を変える。

「適齢期の男と女が一緒にヤル事っていったら”ナニ”だろ」

「そう…ね」

「香ちゃん、答えが分かっていて分からないフリはよくないぞぉ」

「あんたと、この手の話をして…いい目にあったことはないもの」

「あんれ~、ボクちゃん目いっぱい奉仕してんのに。満足してないのかなぁ?」

手加減し過ぎたかなぁ、とわざとらしく首を傾げる獠に香の目がパチッと開き、続いてぎゅっと抱きしめる腕の強さに香の顔が青くなる。

「満足してる、してる、からぁ!」

「ふうん……じゃあ、気持ちいい?」

「う………う、んぅ…、気持ち…いぃ…///」

「はは、香ちゃん、照れちゃってか~わいい♡」

そういって満足げに笑う獠はいつもより無邪気でありながらどこか妖艶で、正視できなくなった香が目を背けると大きな手のひらが香の頬を撫でた。

手が頬を撫でる感触に香は首を竦めてくすぐったそうにしつつも、獠の眼の強さと触れる温かな感触に香の脳がとろりと融けて、

「……あー、もう、恐ろしいやつ」

蕩けた瞳で己を誘う極上の獲物。

ゴクリと鳴りそうな喉を、ぐっと背筋をなぞった熱情を、いつものように茶化すことで無理矢理押さえつけて、獠はゆっくりと姿勢を変えた。

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「んっ…で、童話が何だっけ?」

「ドロドロの愛憎劇も童話も、男と女が揃えば何でも同じって話」

軽い言葉とはうらはらに何かを願うような声音が気になり、香はぼんやりし出した脳の中の答えを探す。

王子様といえば容姿端麗、文武両道。

女性に優しくて、白馬に乗っている。

頭に王子様の条件が並べてみて、

「あんた、馬に乗れる」

「…乗れるが、別に俺は王子様になりたいわけじゃないからな」

好みの美人をみすみす逃がしちまうなんて間抜けだと。

自分を助けてくれた美人を間違えるなんてあり得ないとか、呆れたような獠の言葉に『だよね』と香は内心で笑う。

(王子様ってそもそも何だろう。王様の後を継ぐ人、世襲……もしかして血?)

「ミックなんぞ王子様風で人気があるがあの中身は腐れ野郎だからな」といつの間にか王子様からミックの話に移っていた獠を香は見つめる。

幼いときに傭兵の集団に拾われた獠には確かな名前も年齢もなく、王子様なら何代も遡れる受け継ぐ血の流れは一切分からない。

戸籍もないため、Happy Endのお約束と言える結婚ができない。

(……まったくもう)

子どもの頃に一度は王子様とお姫様の素敵な恋物語を耳にしたが、過去はどうあれ今は二人の恋物語に憧れはない。

童話よりも現実のほうが身近にあって、大人になれば男と女のことに必ずしも愛情は必要ではないことをイヤでも知る。

それなのに。

愛しい男のものしか触れたことがない己の唇。

愛しい男だけが知る己の体。

「なぁに笑ってんだ?」

珍しく弱気になった己を恥じて獠がすねたように口を開けば、初めて自分の唇が笑みの形に弧を描いていたのを香は気づく。

そして小さく笑うと、すりっと猫のように頬を獠の胸に寄せてみる。

「手に手を取って見つめ合って、キスして、まあ、ナニをして…の相手があんただけな私ってHappy Endなんじゃない?」

「…俺って愛されてる」

「あら、いまごろ気づい…って」

ぐるんと視界が回ったと思えば天井をバックに髪を垂らした獠が視界を占める。

この後の展開が分からない香ではないし、体力の限界がすぐそこなのも分かるのに、ぎらっとした獠のオスの目に香の中のメスが幸せそうに喉を鳴らす。

「Happy Endまでは理性が頑張るが、終わっちまえば本能のエンジン全開だよな」

「あんたのエンジンはもう少しポンコツで良いと思う」

「香ちゃんに関しちゃブレーキ踏み過ぎていかれちまった♡」

覚悟しろよ、と獠はその熱くなった体で覆いかぶさった。

END

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