最初の男と最後の女

シティーハンター

シティーハンターの二次小説で、原作終了後(奥多摩後)の獠×香です。

ふたりは恋人同士です。

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「こんにちはー…って、どうしたの?」

獠のツケの支払いにきた香は、ママの隣に座り両手で顔を覆って泣く店の子に首を傾げた。彼女はこの店でナンバーワン争いをするほど人気があり、その分プライドも高く人前で泣くような性格ではない。その彼女が、客ではないとはいえ他人の目があっても泣き止まないことに香は驚いていた。

「ああ…うん、まあ……ちょっとね」

いつもハキハキと話す姉御肌のママには珍しく言葉を濁す様子に、ママの視線を追って店の奥を見るとそこには女の子の集団。慰める声に囲まれているのは、片頬を押さえて泣くひとりの女の子。

(男絡みかなぁ)

酸いも甘いも嚙み分けまくったであろうママでさえお手上げらしき状態に、恋愛初心者の自分などお呼びでないと判断した香は出直すことを決めたが

「香さん…ちょっと聞いてくれる?」

爪の先まで隙のない白魚のような手が香の手に触れる。しなやかで嫋やかなその手は優雅を具現化したような動きであるのに、ぎゅううううううっとつかむ力は強くて。

思わず香がママを見ると、ママは首を横に振って笑顔で親指を1本立てる。

「香ちゃん、ちょっと付き合ってあげて頂戴。もちろん御代は取らないし、獠ちゃんのツケもおまけするから、ね」

ママの提案を蹴れる経済状態ではない冴羽商事。札束に頬を叩かれて頷く己に脱力して香が頷くと、ママの指示でボーイが赤ワインをボトルで三本置いていった。

(ちょっとって量じゃないわよね…)

今日の仕事はここまでか、と香はため息を吐いて一本目の栓を開けた。

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