お姫様のお説教

四天王×四守護神

美少女戦士セーラームーンの二次小説です。

四天王×内部四戦士のシリーズ(四つの恋模様)の番外編で四天王が転生する前の小噺です。

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「え?まもちゃん、今日も帰って来られないの?」

ひたすら『すまない』と繰り返す衛に気にすることはないと伝えたものの、誰もいないがらんとした部屋は寂しさが募る。

衛の忙しさはうさぎも理解している。

大学での勉強に加え、次期王として地球のどこかで異変があれば自ら調査に向かう。

1日が24時間では全く足りない生活だった。

「大体地球は広いのよ?まもちゃん一人で全部できるわけないじゃない」

うさぎたちは月の力で地球を守ることができるが、地球と言う星そのものが傷ついたときは衛のヒーリングでしか治すことができなかった。

以前の地球王国とは違い今の衛の仕事をサポートできる人もおらず、衛はひとり世界各地に飛び地球を守り続けている。

 「もういい加減にしてほしいんだけど」

まもちゃんとのラブラブ時間が無いじゃない、とうさぎはセーラー服を翻して衛の寝室に向かった。

クリーム色と紺色で統一された落ち着いた雰囲気の寝室にあるチェストの上に置かれた細かい銀細工の箱。

「まもちゃん、ごめん」

親しき仲にも礼儀あり。

いくら前世からの唯一無二の恋人とはいえ、触れてはいけないプライベートな部分に触れることをパンッと両手を打って謝ると丁寧にふたを開ける。

中にはキレイに並んだ四つの石。

かつて地球国の四天王だった彼らの名前を冠する鉱石があった。

 「あのさ~、もう、私、分かってる、ん、で、す、け、どぉ~?」

ギャラクシアとの闘いのとき、あのコルドロンで彼らのエナジーを確かに感じた。

コルドロンは新たな生を得る場。

衛も、セーラー戦士も、一度失った命をここから蘇らせた。

「あのときあなた達は復活することができた。それなのにしなかった。まあ、いろいろ理由もあると思うわ! でもね、その理由を言わないのも卑怯なんじゃない?まもちゃんがあなたたちを待っているのに気付いているでしょ? それにね、早く起きて地球を守る手伝いをしてくれないと、私、まもちゃんと全然いちゃいちゃできないんですけど!」

うさぎは腰に手を当てて石の前に仁王立ちになると四つの石を睨みながら銀水晶を納めたブローチを掲げ「いい加減にしてよね!」と最大パワーで月の光を四つの石に浴びせた。

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「ガンコ者」

うさぎは4人の男性を睨みながら頬を膨らめた。

彼らはまるでそこにいるかのようにリアルだったが体が透けて幽霊のようだった。

「お久し振りです、プリンセス・セレニティ」

かつて地球国の王子の側近だった四天王のリーダーであり、腰まで届く長い銀髪が特徴的なクンツァイトが恭しく頭を下げた。

それにしたがって、他の3人も頭を下げる。

そんな4人の男たちをうさぎはジッと観察しているから 「どうしましたか?」とジェダイトが尋ねると

「いや…足があるなぁって。あなたたちってお化けじゃないの?」

「お化けなわけないでしょう…全く貴女は相変わらずですね。私たちは貴女のかつての母君であるクイーンとその側近ヘカテ様の力によって眠っているようなものです」

「眠ってる…つまり体はあるってこと?」

「もちろんです。私たちの体はいま石に化けていると思ってください」

理解力の低いうさぎが分かるように出来るだけ簡潔にゾイサイトは状況を説明した。

どの程度までうさぎが理解できたのかはうさぎ自身でさえ分からなかったが、うさぎはこのとき確信した。幻の銀水晶の力だけでは足りないのだと。

(エリオスがまもちゃんのクリスタルは戴冠式のときの銀水晶の力にキョウメイして覚醒するって言ってたから)

ブツブツと何かを呟くうさぎに4人が首を傾げていると、玄関の方から音がして

「うさ、俺の部屋から爆発音がしたって管理人さんから連絡が来……」

衛の言葉の続きはバサバサバサッと本が落ちる音で途切れる。

「まもちゃん、四天王のこと私に黙っていた理由を説明してくれる?」

にっこりと笑ううさぎに、状況の把握もままならぬまま衛は白旗を上げる羽目になった。

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「贖罪の気持ち、ねえ」

ふうん、と衛が用意したミルクティを飲みながら頷いたうさぎ。

その表情は不満げで、衛としては彼らの贖罪の気持ちも判るので黙っていた。

メタリアに操られていたとはいえ、自分の軍を率いて攻め入った罪、ダークキングダムの者として彼女らを苦しめた罪。

うさぎをこの手にかけようとしたあの一瞬を忘れられるなら忘れてしまいたいと衛自身いつも思っていた。

 「過去の罪とか何とか、男たちで勝手に反省しちゃってさ!女の気持ちはどうなるっての!も・ち・ろ・ん、まもちゃんもよ?」

うさぎの矛先が衛にも向かう。

「この際だから言っておきますけどね」

「「「「「 はい」」」」」

「申し訳ないから離れよう、守りたいから別れようは男の都合よ? 全く私たちは大切にされなきゃ壊れちゃうガラス細工じゃないっての! 恋する女は強いんだからね、なめるんじゃないわよ!!」

言い切ったうさぎはふうっと息を吐き 

「啖呵切ったらスッキリした。ずっと焦れったかったの」

「…うさ」 

感情が高ぶった衛はうさぎの細い身体を衛は抱きしめて、「ごめんな」とうさぎに聴こえるかどうかの音量で呟いた。

二人のプライベートな雰囲気を察した四天王は再び石の形に戻り、リビングには2人だけが残された。

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「うさ…」

衛はかつてうさぎが死んでしまう未来が怖くて逃げだした。

守るためと理由をつけて、自分を誤魔化して、うさぎを泣かせた。

 「分かってくれれば良いの…ずっと、言いたかったのよね」

あの日失う覚悟をした温もりは未だ腕の中にある。

全て諦めた衛とは違って、絶対にあきらめなかったうさぎのおかげで。

そんなうさぎは衛に寄りかかる、何気ない信用の証が衛には嬉しかった。

「恋は女を強くするのよ。だから覚悟してて、わたしはまもちゃんがいればもっと、も~っと強くなれるの。それにね、私は知ってるの」

甘く囁いたうさぎを衛はぎゅっと抱きしめて、衛の温もりに目を細めて浸りながらうさぎは優しく昔語りをする。

「あのとき恋をしていたのは私たちだけじゃないの」

「…知っていたよ」

彼らに確かめたわけではないから確証はないけれど、何となく彼らに流れる空気に時折混じる甘さを感じていた。

自分と同じように、月を切なげに見つめる彼らを見たことさえあった。

「ダメだと言われると余計惹かれるのだろうな」

「経験者は語る、だね」

衛の言葉をうさぎは笑いながら茶化し、窓辺に寄って暗くなった空を見上げた。

今夜の東京は晴れていたから、夜空には真珠のような白い月が輝いている。

白い輝きを瞳におさめると、月に愛された姫の額にシルバーミレニアムの王族の証がうかびあがる。

「恋をしちゃだめなんて…そんなの無理に決まってる。だって月そのものがずっと地球に恋していんだもん」

シルバーミレニアムができるずっと昔から、月は地球の隣に寄り添いその白い輝きで青い星を優しく包み闇を祓ってきた。

ずっとずっと地球が宇宙の闇で寂しさを感じないように。

「そうだな」

メルヘン思考のうさぎらしい理屈に衛は微笑むと、彼女の額で輝く三日月に優しく口づけた。

そして

「まあ、やつらも戴冠式の頃には腹をくくるだろう」

かつての仲間が隣に立つ未来を思い浮かべた衛は嬉しそうに微笑んだ。

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