美少女戦士セーラームーンの二次小説で、原作終了後の未来のまもうさ+四天王×内部四戦士です。
四つの恋模様の番外編(スピンオフ)にもなっています。
Lia様のリクエストで、イメージソングは家入レオさんの「僕たちの未来」です。
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「冷えるぞ」
「ありがとう」
月の光で織ったようなショールを掛けられたうさぎが顔を上げて衛に微笑んだが、その笑顔に憂いを見た衛は僅かに膨らんだ腹部に手を当てて体調を気遣った。
そんな衛にうさぎは首を横に振る。
「ちょっと昔を思い出していただけだから」
悪い想い出だけじゃないが哀しみで終わった前世。
幸せなときは必ず悲しい過去が忍び寄る。
「私はやっぱり子どもだっただなぁって。今なら解かるの…お母様の気持ちが」
禁忌だと言われたけれど落ちた恋。
恋心は止められないとか、
好きになっちゃったんだから仕方がないとか。
未熟さゆえに抑えることもせずに、ただ恋を楽しんでいた前世の自分に対し、娘の幸せを願うからこそ許されない恋に反対したクイーン。
「最後は娘の幸せを願ってくれた」
「うん…だから私はここにいるのよね」
手の平を眺めたうさぎは窓ガラスに映った自分の姿を見る。
前世は未だ終わっていない。
前世の記憶をまるごと抱えた自分がここにいるのだから。
「エンディミオン…大好きよ」
「それなら悲しそうな顔をするな」
ガラス越しに見るうさぎの泣きそうな顔に衛は悲し気に笑う。
「だって…あの力があれば月の王国を蘇らせれたはずなのよ?」
「セレニティを女王として、ね」
衛は一歩前に足を進めると、
いささか乱暴にうさぎの顎をあげさせる。
「君はそれを望むのか?」
非難するように問うたものの、
衛には答えを聞く気はなかった。
聞くのが怖かった。
だから衛はうさぎの唇にキスをしてその唇を塞いだ。
それは戒めを与えるかの様な熱いキスだった。
「過去も未来も関係ない。彼女の娘である君が幸せであることがクイーンの願いのはずだ」
「ごめんなさい」
「違うだろ」
しゅんっとしたうさぎに衛は表情を緩めて優しく頭に手を置く。
「ありがとう」
くすりと微笑んだうさぎは衛の肩にすり寄る。
「それで良いんだ」
衛はうさぎににっこり笑いかけると、
長い髪をすくい今度は優しくキスをした。
そしてうさぎを窓ガラスから遠ざける。
「君はしばらく月を見るのは禁止だ。月に呼ばれる君を見ると不安になる」
月は愛しい姫を呼び続けている。
『我がもとに戻れ』と囁き続けている。
体が人間のものとなってもうさぎの体には月の力が宿っている。
それが月の姫の証。
地球に降りた月の姫はどうなったか。
月が恋しくて帰ったではないか。
「君を月に渡す気はないよ…いや、”君たちを”だな」
「うん」
「君の家はここだ…いいね?」
「ありがとう」
微笑んだうさぎは衛の首に腕を絡めてキスをした
「行くぞ」
ほうっと安堵の息を吐く者
愛の囁きににやつく者
そんな彼らをその場から離すため、クンツァイトはいささか強めに号令をかけた。
「これ以上は覗きになるぞ」
一番こういうことが好物な美奈子の肩を抱き、
抗う力以上の力で引き摺って行く。
おとなしく引きずられたものの十分離れたところでくってかかろうとした美奈子だったが、空を指差す亜美の声に妨げられた。
星降る夜空にその場にいた全員がほほ笑む。
「新しいプリンセスの誕生を祝いに来たのかしら」
「まだ生まれてもいないぞ?」
そんなの解かってるわよ、と
今度こそ美奈子がクンツァイトにくってかかる。
そんな2人の間にいた亜美は慌てたが
「放っておきなさい。好きでやってるんだから」
「ゾイサイト」
肩を叩かれてホッとすると手に持っていたカルテに視線を落とす。
亜美はうさぎの主治医で、医学の心得もある衛にもカルテを渡しておくつもりだった。
「いま行ったら後ろ足で蹴られちゃうわよ。明日になさい。いまは甘いものを食べに行くわよ。今朝早くにキングに起こされたから疲れたでしょ」
「キングのあの慌て様は見ものだったよな」
「それだけクイーンが大事だってことだろ」
笑うネフライトをまことが窘めたが、
そんなまことにネフライトニッと笑いかけ
「今日の仕事がもう終わりなら飯おごるよ、いつものお礼」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
まことの返事にネフライトはパチンッと指を鳴らすと、
まことの腰に軽く腕を回して集団から離れていった。
(スマートだよなぁ)
さり気なくデートを決めた二人を見たジェダイトは、
己にため息を吐いてクンツァイトを見る。
(ここは見本になりゃしないし)
どうしたものか、とジェダイトが一人悩んでいると
「ジェダイトもこれから晩ごはん?」
「う、うん。マーズは?」
「私もこれからよ」
マーズの微笑みにジェダイトが勇気を得て
「それじゃあ俺たちもご飯に行かない?」
「私もそう言おうと思っていたの」
「ヴィーナスを誘ってもいいんだけど」
レイは困った顔でクンツァイトと言い合う美奈子を見て
「お邪魔するのも悪いしね。…代わりになんて申し訳ないけれど」
「あなたのお誘いなら喜んで。どこに行こうか」
「そうねぇ」
楽しそうなジェダイトの声が遠退くと、
ふたりきりで残されたクンツァイトはため息を吐く。
そんなクンツァイトに美奈子のボルテージがまた上がる。
「何、溜め息吐いてるのよ!」
「腹が減った」
自分の怒りなどどこ吹く風のクンツァイトに美奈子はムッとし
「それじゃあ好きにしなさいよ…痛っ」
ふんっとクンツァイトに背を向けて、
去ろうとした美奈子の姿勢が大きく崩れる。
元凶を睨みつけても美奈子の髪を一房掴んだクンツァイトは涼しい顔。
「何すんのよ!」
「俺たちも飯に行くぞ。一人で食べる気分じゃない」
「行けばいいじゃない」
「今夜は祝いたい気分なんでな…お前もだろ」
クンツァイトの言葉に美奈子はハッとする。
なにしろ主の懐妊が分かったのだ、美奈子も盛大に祝いたい気分だった。
しかし仲間はみんなデートに行ってしまった。
「こんな日に一人じゃ寂しいじゃない!」
「だから誘ってる。行くか?」
しれっと誘う男を美奈子は睨み
「あんたの奢りよね?」
「もちろん。女に出させるわけないだろ」
呆れた様なクンツァイトを睨み
「めちゃくちゃ高いところで奢らせてやるから」
「やっぱり行くのか」
着替えるために自室の方角に向かった美奈子の背にクンツァイトは表情を緩める。
『やれやれ』と呆れつつも楽しくて仕方がないという感じの顔だった。
「ドレスコードのある店なら立派なデートだと思うんだが」
それでもデートじゃないと言いきるだろう。
そんな美奈子を想像したクンツァイトは珍しく小さな声に出して笑った。
END
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