ホットひといき / 美少女戦士セーラームーン

四天王×四守護神

美少女戦士セーラームーンの二次小説です。

四つの恋物語の番外編になります。

四つの恋模様(シリーズ) – 大人女子のサプリメント (xn--k9jc5i.com)

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「お疲れ様。ちょっと一息いれよ♡」

 目の前に出された珈琲とチョコレートに衛は書類から顔を上げると、

うさぎが色違いのカップを持った両手を顔の高さに上げて微笑んでいた。

うさぎの誘いに衛も笑って頷いてメガネを外す。

うさぎは満足して衛用のカップをデスクの上に置いて、

自分の分は手に持ったまま窓際に向かう。

ここはクリスタルTOKYOの中心、

天を突き進み月に届くようにそびえるクリスタル=パレス 。

天辺に近い位置に扉を挟んで対称にふたりの執務室があり、

窓から見える地上を走る自動車のランプが星のように瞬いていた。

「どんどん街ができてくるね」

「この街そのものが地球と、この太陽系の防衛の要になるだろう」

カップを持ったまま衛がうさぎの後ろに立つと、

うさぎは半歩後ろに下がり衛にトンッともたれかかる。

「どうした?」

「休んでいるの」

うさぎは目を閉じて衛の温もりを感じながら穏やかに微笑む。

そんなうさぎを衛はカップを持っていない腕で包み込むと、

湯気をあげる深い青色のカップよりも、

腕の中のうさぎの方が衛には温かかった。

「君が…うさ、君が居れば俺は頑張れるよ」

「私ってビタミン剤みたいね。まもちゃんも私のビタミン剤よ」

うさぎは衛の腕の中で身体を回し、

背伸びをして衛の唇に自分の唇で軽く触れる。

「もっと元気出た…ありがとう、キング」

「俺もだよ、愛しのクイーン」

呼称を変えて女王然してもその目は茶目っ気たっぷりで、

気取って衛が囁き返せば、

ふたりは同時に笑いだし、

またお互いの唇が重なろうとしたとき、

ガシャーン

何かが割れる音と怒鳴り合う声がフロアに響き渡り、

キスを中断したふたりは至近距離でため息を吐き苦笑した。

クンツァイト vs 美奈子

「少しは落ち着いたらどうだ?」

「落ち着いてるっての!!」

落ち着いているとはどうみても説得力がない姿で美奈子は怒鳴る。

さっきのオーラの爆発で窓ガラスは吹き飛び、

枠だけになった窓から吹き込む風が美奈子の怒りと混じり合い渦を巻いた。

「全く…生まれ変わってもその直情型は変わらんな」

クンツァイトは乱れる長い髪を軽く押さえながら、

荒れ果てた自分の執務室に眉を顰めて飛んできた書類をその長い腕で捕まえた。

その冷静な口調と対応に美奈子の怒りのボルテージがあがる。

あんたもね!!その鉄仮面っぷりは相変わらないっての!!……んぐっ」

突然口に飛び込んできたものに美奈子は声を詰まらせ、

反射的に口を閉じる。

「・・・」

とたんに口内に広がったのは甘さとチョコレートの香り。

それは美奈子の好みに合ったミルクチョコレートの味だった。

「あに…これ?」

「チョコレートだ。分からなかったのか?」

 「それは解かってるって。何で私の口に押し込んだのか聞いているの!」

「疲れには甘いものが良いと聞いた……働き過ぎだぞ」

反射的に反論しようとした美奈子の前に手を出して、

美奈子の口を封じたクンツァイトは冷静に指摘する。

「もう10日間休みを取ってないだろう。たまに足元がふらついているぞ」

クンツァイトの言葉に美奈子の反論はなく、

反論がないということは本人も自覚していたのだろう。

「今は俺たちもいる、一人で全てを抱え込む必要はない」

「解かった、言葉に甘えることにするわ」

美奈子は自分のやるべきことをよく理解していた。

己のプライドよりも、己が守ると決めた人の方が美奈子には遥かに大事だった。

「それならいい。仕事は俺と…まあ、誰かに頼む。お前はゆっくり休め」

そういって穏やかに笑うクンツァイトに美奈子の心臓が高鳴る。

直視できなくて思わず目をそらしながら、

口の中のチョコレートをもぐもぐと噛み

「ありがとう……その、チョコレートも美味しかった。どこで買ったやつ?」

「さあ」

 クンツァイトの回答に美奈子は首を傾げた。

「そのチョコレートはさっき人からもらったやつだ。どこで買ったかは彼女に訊けばい…どうした?」

無言になった美奈子にクンツァイトは首を傾げ、

そんなクンツァイトに対し美奈子は「後はよろしく」とだけ伝えて扉を開け

バタンッ

扉をあけて出ていった。

急な圧力にミシッとうなった室内にクンツァイトは首を傾げるだけだった。

ゾイサイト & 亜美

(うわ~…相変わらず興味ないことには鈍感)

立ち聞きするつもりはなかったが向こうは窓ガラスがなく、

こっちは何ごとかと思って窓を開けていた。

その結果、向こうのやり取りは窓の近くにいたゾイサイトには筒抜けだった。

「どうなさったの?」

「いや、何でもない。はい、ココアいれたわよ」

礼を言った亜美はにこりと微笑んでカップを受け取る。

そして匂いを嗅ぐと、「いい香り」と満足げに微笑んだ。

「カカオにはリラックス効果があるわ。頭使う仕事には必需品よ」

 「いい香り…ゾイサイトが居てくれてよかった」 

ひとりごとのような亜美の言葉にゾイサイトの心臓が鳴る…が、

直ぐに軽く深呼吸して自分を落ち着かせる。

かつて地球一の智者と言われたゾイサイト、

学習能力の高さをここでも発揮する。

 「レイちゃんは占いで忙しいし、美奈子ちゃんとまこちゃんはこういうの不向きですから」

「……だよねぇ」

 尊敬をこめた亜美の眼にゾイサイトは苦笑をした。

「それにしてもすごい書類の量ね。手伝いましょうか?」

「それなら封書を開けてもらえませんか?今日はいつもの補佐官じゃなくて、封が閉じられたまま届いてしまって」

「あなた…、まだラブレターアレルギーなの?」

「呆れないで下さい。自分でも何でこんなに封をあけることに抵抗があるか分からないんですから」

「よほど嫌なラブレターがあったのかしらね」

「そうなのでしょうか……違う気もしますが、答えがない限り考えても仕方がありませんね。とにかく仕事に支障がでるのはとても困ります」

「いつでも私を呼びなさい。いっそのこと広い執務室を用意してもらってそこで一緒に働く?」

執務室といってもほとんどの時間を過ごす場所。

そこかしこにプライベートのものがあり、簡易キッチンや仮眠室もついているので各人の住まいのようでもある。

それを2人で使うとなると同棲のようでゾイサイトは冗談のつもりだったが

「それは良いですね。私、ゾイサイトならいいですよ?」

にっこり笑って仕事に戻る亜美にゾイサイトは絶句して、

「学習しろ、俺」と小さく何度もつぶやきながら重ねられた書類から封書をとって勢いよく封を切った。

ネフライト & まこと

「…いつの間に」

亜美の執務室の前でノックのタイミングを計っていて結局叩けず、

意図せず立ち聞きのようなことをしたまことは突然名前を呼ばれて慌てた。

そしてまことを呼んだネフライトを気まずそうに見る。

「見た?」

「ああ。何か、ものすっごく物欲しそうにしていたな」

「物欲しいって」

「彼氏欲しい欲しい、って雰囲気だったぞ」

 渋い顔をするまことにネフライト笑い、

その頭をポンポンッと優しく叩いた。

まことのトレードマークのポニーテールがその衝撃で揺れ、

まことが耳につけたピアスが見え隠れしながらその存在を主張する。

「いつも付けてるんだな、これ」

「<これ>? ああ、ピアスのことか」

 まことはネフライトの視線を追い、

それが自分の耳につけたバラのピアスのことだと分かって嬉しそうに笑う。

「ステキだろ?先輩からもらったんだ」

「…<先輩>、ね」

「あ、バカにしてるだろ?私の片思いだったけど…いい思い出なんだ」

 「…いいんじゃないか?」

苦笑したネフライトがまことの執務室の扉を開けると、

ネフライトの鼻に甘い香りが届いて嬉しそうな表情になる。

「これ前に作ってくれたやつだろ?チョコレートとオレンジピールのやつ」

「…鼻が良いなぁ。訓練の相手してもらったお礼にと作っておいたんだ」

「食べる?」と聞くとネフライトは大きくうなずき、

まことの邪魔にならないように上手に手伝う。

「訓練に付き合ってくれて助かったよ。ネフライトは教えるのが上手だよな」

「体動かすのが好きなんだ」

「だからどっかの道場に通っているんだ」

「強くなりたいからな。武道やっていると身のこなしもキレイになるし、そうなりゃ…」

「「モテる」」

「それが目的か」とまことが言って笑えば、

「男の動機なんてみんな単純なものさ」とネフライトは笑う。

「そういえば先輩もなんか武芸やっていたんだ。あれ、何だっけ?剣道だったっけかなぁ。最近、先輩との思い出がやけにおぼろげなんだよな」

「……ボケたんじゃないか?」

切り分けたケーキを遠ざけたまことにネフライトは慌てて謝る。

そんなネフライトに笑ってまことはケーキと飲み物を給仕する。

コーヒーをカップに注ぐまことの髪がサラリと落ちて、

バラのピアスが煌めいたから

「あのさ…その、<バラのピアスをくれた人>のこと…好きだった?」

ネフライトの言葉にまことは首を傾げてピアスに手を伸ばし、

今や付けていないときのことなんて思いだせないほど常に在るピアスに触れる。

 「うん、好きだよ」

「…そいつがどんな奴でも?」

「当たり前だろ?…っていうか、先輩はいい人だった!それに……例え善人じゃなくても、私はその先輩が好きになったんだから」

 まことの言葉にネフライトは顔を緩ませるだけだった。

ジェダイト & レイ

 「…そう言うことだったのね」

レイはまことのピアスがずっと気になっていた。

ピアスから感じていたのはまことを守る様に立ち昇るエナジーで、

彼女の両親かと思っていたが四天王が転生してその正体を知り、納得した。

「あら…?」

微笑を口元に浮かべながら部屋に戻ったレイは、

デスクの上に置かれたチョコレート色のバラの花束に気付いた。

補佐官が送り主を言う前に「J」と書かれただけのシンプルなカードに気づいたレイは微笑みを深くした。

補佐官にバラを活けておくように頼み、

再び廊下に出て回廊を歩く。

目的地はパレスの一角にあるバラ園で、

レイは慣れた足取りで踏み込み目当て人物を探した。

「ジェダイト、バラをありがとうございます」

「ありがとう、新種交配の結果を早く君に見せたくてね」 

嬉しそうに汗を拭ったジェダイトの顔に土がつき、

その姿にレイは笑った。

その姿を見て、(よく笑うようになった)とジェダイトは思った。

 パレスの神殿で未来を予知する姫巫女。

握手をすれば相手の未来が瞬く間に読めてしまう彼女は、

その高嶺の華のような外見とともに王とは別の意味で孤独だった。

マーズとしてクリスタル・TOKYOを礎にして闘ううちに過去の力を思い出し、先見の力はどんどん強くなった。

だから四天王が転生したとき差し出されたジェダイトの手をみてレイは躊躇わずにいられなかった。

そんなレイの手をジェダイトは自分から握り驚き、

身構えていたレイは更に驚くことになった。

自分の手をじっと見たレイは、

じゃれないながら触れ合っていたまこととネフライトを思い出しジェダイトに問いかける。

「ジェダイト…手、握っても良いですか?」

「土が付くよ?……それでもいいなら」

どうぞ、と差し出された大きな手をレイは握る。

軍手越しでも確かに感じる人の温もり。

ジェダイトはエリオスの先代にあたる祭祀を叔父に持ち、レイと同じ先見の力を持っていた。

同じ力を持つ同士、お互いを読むことはできなかった。

「クイーンとキングは…よく触れ合っていますよね?もちろん、私も2人は仲が良いのは分かっていますが……それでも、何であんなに触れ合っているのか分かりませんでした」

「今なら分かる、のかな?」

「ジェダイトは意地悪ですね。……でも、確かに今は分かります。触れたい、とさえ思います。だってとても安心しますから」

「ひとはいつまでも幼子なんですね」と小さな少女のように微笑むレイにジェダイトは苦笑して

「”安心”……か、俺もみんなも未だ先は長そうだなぁ」

END

ホットひといき / 美少女戦士セーラームーン

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