永遠に想う / セーラームーン

美少女戦士セーラームーン

美少女戦士セーラームーンの二次小説で、原作終了間近のまもうさです。

クリスタルTOKYOを作るときにうさぎの家族は、他の戦士の家族はどうしたのかと想像して作りました。

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「寄ってく? まもちゃんが来たら、お母さんたちも喜ぶけど」

家を指さすうさぎの言葉に衛が首を横に振ると、

お互いにどこか悲しそうな瞳が交わされる。

「うさ…うさが”月野”でいられるのはあと少しだから」

家族水入らずの邪魔はしたくない。

そんな衛の想いに感謝と、

誰もいないマンションに帰る衛を思うと一抹の寂しさをうさぎは感じる。

「まもちゃん…「うさ」」

離れがたくて、

衛を一人にするのが嫌で、

もう少し共にいようと口を開こうとしたうさぎを衛が遮る。

「いまは俺より家族を優先しろよ…後悔のないように、結婚式の後にやると決めたんだから」

「…うん」

くしゅりと顔をゆがめたうさぎに衛は苦笑して、

その華奢な顎に指を掛けると上向かせて唇を唇でふさいだ。

日が暮れかけた住宅地だから、

触れあった唇は一瞬で離れる。

「うさは覚えていて。家族の温もりを…彼らが忘れても、うさはしっかりと、な」

それじゃと軽く手を振った衛はうさぎに背を向けて、

いつもより早い足取りで歩いて最初の角を急いで曲がり、

月野家が見えなったところでホッと息を吐きブロック塀に背を預けた。

『良かったら夕ご飯、食べていかれません?』

愛おしいうさぎによく似た笑顔で微笑む人

『進吾が飲めるようになるまでもう少し我慢しないと』

娘の恋人という立場の男を、

内心いろいろ思うことはあっただろうに気さくな笑顔で受け入れてくれた優しい人

彼らと過ごす時間は優しくて、

『結婚しても…』と未来を語る彼らに衛は申し訳なさが募ったが、

衛の選択肢は常にひとつだった。

『エンディミオン様』

『まもちゃん』

衛にとって不変は常に彼女だけで、

彼女以外を選ぶつもりは毛頭なくて、

地球の男と月の女だった過去は多くの人を傷つけた恋だけど、

いまは同じ地球人として多くの人に祝福されていて、

周囲に結婚の意志を伝えたときたくさんの「おめでとう」をもらった。

カチャ

マンションについて鍵をテーブルに置けば、

たった一人の空間は些細な音でも大きく響く。

『ママたちや、なるちゃんから…”私”に関する記憶を消そうと思う』

このテーブルでうさぎが泣きながらみんなの記憶を操作する決意をしたのはほんの数日前のこと。

それはいずれ決意しなければいけないことだった。

うさぎが持つ銀水晶の力は強大で、

地球を護ることができる一方で人々を狂わせるもので、

強大な力を扱う者に求められるのは公平と平等、

同じく強大な力を持たない限り『家族』という存在は危険でしかなかった。

『俺がやろうか?』

銀水晶と同等の力をもつ黄金水晶を持つ衛の提案にうさぎは首を横に振った。

『ううん、私の家族で友達だから…私がやる』

うさぎの胸の内を回る葛藤と哀しみがわかるけれど、

さらに追い打ちをかけることと分かっていても、

このとき衛は避けられない質問をうさぎに投げた。

『美奈たちの…家族はどうする?』

彼女たちは地球の人間として転生してきたが、

覚醒して月の者としての特異な性質である長寿の片鱗が現れてきた戦士たち。

『みんな夢があるのに……私のせいね。私がみんなから夢も家族も奪うんだわ』

うさぎは美奈子や亜美がその夢のために努力したのも知っていた。

前世を理由にそれを捨てて欲しいなんて言えないと泣くうさぎを衛は抱きしめるしかなかった。

ピンポン

突然鳴ったチャイムに過去に浸っていた衛は我に返り、

インターホンで応答した。

「私たち記憶の操作を受けることにしたわ」

マンションに来たのは美奈子たちで、

前置き無しの宣言に衛は苦笑する。

「お互いにうさに甘いな」

今のままではうさぎは悔恨の念を捨てきれない。

自分の存在が彼女たちの未来をめちゃくちゃにしていると心の片隅で思い続ける。

だから「”これ”は自分たちで決めた未来なのだ」とうさぎに納得させる必要があった。

「この生き方を決めたのは私たちと言っても納得しないもの…ほんと、昔から変わらないんだから」

衛が出したお茶菓子を遠慮なく食べながら彼女たちの前世の話に花が咲く。

地球で暮らしていた自分が知らないセレニティ王女のささいな日常のことに衛は聞き入る。

「基本ポジティブなのに変なところでネガティブなのよね」

「義務感でずっと付き合っていられませんわ」

愛情たっぷりの悪口に衛は笑うしかなく、

そんな衛に嫉妬混じりの視線を四人が向ける。

「私たちも彼女を愛しているのに」

「なんで彼女が選ぶのはいつも貴方だけなんでしょう?」

「それじゃあ始めるね」

麻布十番にあるいつもの公園の中心に立ったうさぎに衛がうなずくと、

空に向けたうさぎの両手から白銀の光が溢れ出す。

うさぎが悩んで悩んで選んだウエディングドレスが月の後継者たる王女の正装姿へと変わり、

同時に地球の王族の正装になった衛の体も白銀の光に包まれた。

(温かいな)

それは幼い頃に全てを失って病院で目覚めたときに切望した温もり。

幼い頃に母に抱かれた記憶がわずかによみがえる。

光りの中心ではうさぎが真珠の様な涙を静かに流す。

この優しい光を作ったのは月野うさぎの母である彼女の温もり。

月野うさぎの父親である彼の大きな愛。

そして月野うさぎの傍にいたたくさんの友だちの優しさ。

光が徐々に収束する。

ほんの数分のことだけどまるで永遠のような時間が流れると、

衛の腕に柔らかな腕がするりと絡まる。

「行こう」

公園の前に建ったクリスタルの城の入口に向かってうさぎが歩き出す。

普段は泣き虫のくせに、

ここぞというときは泣かずに笑顔を浮かべて未来を見る。

そんなうさぎが唯一腕を取るのは衛だけ、

それは衛だけは傍にいて欲しいという至福の我が儘。

「      」

名前を呼ぼうとした衛は口を開いてそのまま閉じる。

うさぎ?

セレニティ?

今この瞬間は何と呼んでいいか分からなかったから黙ったままうさぎの腕をひき、

キョトンとした顔で見上げるうさぎの額にキスをして

「俺を望んでくれてありがとう…俺はずっと傍にいる」

「………泣かないって決めたのにぃ」

泣かせないでよ、と

そういって笑ううさぎの目じりに新しい真珠が一粒生まれた。

END

永遠に想う / セーラームーン

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