きっつい酒と男の恋バナ / シティーハンター

シティーハンター

シティーハンターの二次小説で、原作終了後の獠と香は恋人同士です。

物語はCHにボディーガードを依頼した男性(オリキャラ)視点で進みます。

少し槇村に似た男にほだされて、酒の力も手伝って、珍しく獠は本音を吐露しています。

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「好きです」

と告白したら、

「ありがとう、でもごめんなさい」

秒でふられた。

俺の言葉は香さんを一瞬でも迷わせることができなくて、

そんな香さんが揺るぎない愛情を向ける『冴羽獠』という男を知りたくなった。

「で、この状況?奢りだっていうから獠ちゃん張り切ったのにぃ」

「もちろんここは私の奢りです。ただ酒を飲むだけじゃつまらないでしょう?だから私と恋バナをしましょう」

「恋バナ、ねえ」

俺が彼女に告白したことを知っているのだろう。

その顔に浮かんだ皮肉気な表情は『俺相手でいいのかい?』と聞いている。

ここでNOと言うなら端から誘ってはいない。

「ダメですか?」

「いんや、この店の酒という酒の瓶と、あんたの財布が空になるまでお付き合いしましょうか」

そういって笑った彼が注文した。

早速かと唸りたくなるほどきつい酒を同じように注文する。

ここにきてなんの見栄を張っているのだろう。

良いところを見せたい女性は俺の方を見ないことも分かっているのに。

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「しっかしこんな気持ちのいい夜を俺と過ごしていいのかよ」

「意地が悪いですね」

俺が彼女に振られたことはとっくに知っていただろうに。

「気持ちのいい夜だから邪魔したくなったんですよ」

「意地が悪いなぁ、獠ちゃんキズついちゃう」

「まぁ、お互いに意地が悪いということで」

依頼は今日の朝に終わった。

最後の最後に二人が並び合うのを見たくなかった。

振られたからといって昨日好きだった人が今日になって何でもない人になるわけではない。

未練たらしい感情的な俺が俺を嗤う。

「香さんに限らずあなたが女性にもてるのは分かるんです」

「そうかい?」

そういって哂う男はその整った精悍な顔つきに、自他ともに認める実力に裏打ちされた野性味が混じっている。

俺も男として決して弱い方じゃないが、本能が勝てないと思わず平伏したくなる。

俺が女だったなら強い雄を求める本能が刺激され、この男にその身を投げ出していたに違いない。

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「なぜ香さんなんです?」

他にも女性はたくさんいるのに。

「あんたはなんで香だったんだ?」

見事なブーメランだ。

なぜ香さんなのか。

俺自身何度も自問した。

そして答えはなかった。

いっそのこと「美人だから」とか「優しくしてもらったから」とか明確な理由を上げられれば良かったのに。

それならば香さんよりも美人を見つければいい。

香さんよりも優しくしてくれる人を見つければいい。

でも香さんが好きだと思ったのはそんな理由ではない。

理由などない。

強いて言うなら俺は香さんの…

「”香の魂に惹かれた”とでも言えばいいのかねぇ」

「ずいぶんと…素直、ですね」

「ま、柄じゃねえけどなぁ…バカ高い酒の分くらいは恋バナ、付き合おうかなってさ」

カラン

俺の想いに同調するようにグラスの中の氷が鳴った。

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「俺もさぁ、自分がまさかこんなマジなやつするはずがないと思ったんだよねぇ」

薄暗い店内で冴羽さんの灯したライターが、冴羽さんの自嘲的な、それでいて幸せだと分かる笑みを照らす。

「男は種まきが本能だからな。やりたいと感じた女にまたがりゃ簡単に腰が振れるわけよ」

そういってニヤリと笑う男。

隠し子騒動でも起きやがれ、この野郎。

「女だって強い者と交わって子孫を残すという欲があるわけよ」

「お互い様ってわけですか?」

「そういう女しか関わらないようにしてたってのもあるけどな」

こんな男が香さんに惚れられた?

「あなた、そうとう前世で徳を積んだんでしょうね」

「俺もそう思う。新宿のビル群みたいなでっかい徳の山を積んだんじゃねえかな、人柱になってひとつの国を救った的な」

「そのくらいしてくれないと割りに合いませんよ」

思わず肺の中がからっぽになるくらい大きなため息が出る。

過去の武勇伝を語るニタニタとしか評せない顔が、誰をこの瞬間に思ったかすぐ分かるほど優しくなる。

「だから”惚れる”とか”落ちる”ってやつは本能を体のいい言葉にしただけだって思ってたんだよなぁ」

「そんな顔を見せられたら納得するしかないじゃないですか」

”そうかい?”なんて確信犯な、勝ち誇ったような顔に拳一発入れたくなる。

そう、俺は悔しいんだ。

男としての純粋な勝負に負けた。

ああ、本当に、素直に、めちゃくちゃ悔しい。

…ガキみたいだ。

「いい恋したねぇ」

「嫌味ですね、俺の恋した女性と現在進行形でいい恋している人が」

「恋、なんて可愛いものだったら良かったよなぁ」

ふうっと冴羽さんの口から吐き出された紫煙が上空でくるっと回って掻き消えたとき

「愛してんだよ」

小さな声で呟かれた言葉の残響が俺の脳にこびりついた。

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「ちと酔ったかな」

カウンターで寝てしまった男を馴染みの店主に任せ、店の外に出たらこの季節にしてはやや暖かい風を顔に受けた。

そろそろ春だなと感じると、いつも俺に生まれた日を作った女の、あの日の笑顔を思い出す。

あのとき感じた胸の高鳴りを努めて無視した。

親友から預かった香。

闇の世界に招いたのは香を守るためで、脅威が去れば元の世界に返す予定だった。

俺は知らなかった。

”恋をしてはいけない”と自分に言い聞かせた時点で惚れていたということ。

散々自分を罵倒して、

散々自分に言い聞かせて、

それでも否定しきれなかった恋心

惚れていると認めた瞬間にはもう手遅れだった。

恋情なんて言葉じゃ甘い、愛情ってやつを俺は香に抱いていた。

恋情なら香の幸せを願って手を離せたかもしれないが、愛情に育ったこの想いはもう香を手放せない。

香は自分が死んだら別の女と幸せになれという。

俺は一人では生きられない男だからって。

だけど俺は言えない。

俺を忘れて幸せになれとは言えない。

「俺が死ぬときはあいつも道連れにするんだろうな…ほんと、恋なんて可愛いレベルで治まりゃよかったのにな」

END

きっつい酒と男の恋バナ / シティーハンター

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