死がふたりを分けたら

シティーハンター

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  「っ!?」 

突然ゾクリと駆け上がった悪寒に獠は息を呑む。戦場でも新宿でも、自分の命が脅かされるたびに背中の毛が全部逆立つような寒気を感じてきた。何度も味わってきたものだから、体は反射的に動き五感は周囲の気配を探る行動に移る。

不穏なものを察知して排除する、これは獠にとって呼吸の様に当たり前の行為だったが、

(…?)

解らなければ死しかない世界で生きてきただから、この感度に獠は絶対の自信を持っていたのに、探れども不穏な気配は見当たらない。探る領域を拡げてみても同じだった。

しかし、嫌な悪寒は消えないどころか強くなり、傾げた獠の首が途中で止まる。

自分の命が脅かされたのでなければ、獠が”嫌な予感”を感じるのは香のことでしかいなくて、

カランッ

獠は缶を放り投げるとリビングを飛び出しビルを駆け出していく。香は決して自分の意志で獠のテリトリーから出ない。僚を狙っている情報も今はない。

(どこにいる?)

夢の名残か、雨の名残か、獠の気を乱すミストシャワーが香を隠す。髪を伝って顔に落ちてくる雨の滴を悪態をついて拭い、髪をかきあげて空を睨む。

そして勘に任せて進路を決める、何度も命を救ってきた己の幸運とそれを導いた勘にすべてを託すことにした。

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