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「素敵デス」
聴きたいと我侭を言って連れて来てもらった、アパルトマンから少し離れたところにある歴史のありそうな教会。
新年を祝う人で賑わう教会からは厳かな雰囲気を漂わすパイプオルガンの音が響く。
「もう少し早く来れば良かったデス」
こんなに混むとは思っていなかったから、寒空の下で立ち尽くすことになるのは想定外。
「まあ、こんなもんだろ」
初めてで戸惑うことが多いのだめに対し、世慣れた千秋はそれを当たり前の様に受け入れる。
(まるで初めてフランスに来たときみたいデス)
千秋の体はすぐ傍にあるのに。
聴こえて来る音楽に、ロマンチックな異国の街に、千秋の心は溶け込んでしまう。
寂しい。
心細さに目が潤み、雪混じりの冬の夜風がさっと冷やした。
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