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「なに泣いてんだ?」
黙り込んだのだめが気になって、少しだけ屈みこんで顔をのぞいたらのだめが泣いていて。
のだめのイメージと合わない、一つ二つと静かに涙を零す切ない泣き方に千秋は驚く。
「どうした?」
のだめの泣く姿に心が痛むのに、どうやって慰めたら良いかも解らず、問い詰めるしかない自分が千秋は嫌になった。
女の泣き顔を見るのは初めてではないし、これまでは如才のない文句なしの行動がとれたのに、のだめの涙が過去の経験値も全て吹っ飛ばす。
同情を誘うような、男に媚びて関心を誘うような泣き方をしてくれれば無視もできたのに。
「感動したんデス」
強がりを言って、のだめは中途半端な嘘をつく。
「嘘吐け」
口は強がりを言っても、その目は寂しいと呟いているから。
「のだめ」
時期尚早と解っていたけど、千秋の手が自然とのだめに伸びて、その頬をそっと撫でて優しく包む。
近づく唇。
不意打ちとかじゃなく、今までにはないロマンチックな雰囲気で。
「…せ、先輩?」
千秋を呼ぶ嫌いな呼称を綴る唇に触れようとしたら、
「・・・」
温かくて柔らかい手のひらの感触に邪魔された。
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