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衣食住を維持できる程度の仕事を受け、気の向くままに食事をして、酒を飲んで、眠くなったら巣に帰る。
欲を感じれば意気投合した女と肌を合わせるが、床を出れば微かに顔を覚えているくらいで情事の間に「呼んで」と言われて紡いだ名前も思い出せない体たらく。
周囲には孤独や孤高を好むと言われるが、別にそのつもりはない。
幼い頃の隊での生活に窮屈感はなかったし、相棒がいた時代もある。
来る者は適当に選び、去る者は追わない。
流れ着いた新宿では星のように様々な個性が煌めき、適当に星の海を泳いで、楽しく過ごしていた。
そんな自分が。
香に出会って、香に寄り添って、獠は自身の変わりっぷりに狼狽した。
ー よろしくな、相棒 ー
必要性と好奇心、9対1くらいの割合で始めた関係。
あのとき香に握手を求めたのは、今までの相棒にもやってきた、いわゆるテンプレート的な行動。
香の不信な者を見る目に気づかない振りをして、死なない程度にはなるよう香を鼓舞して特訓する上辺だけの相棒。
獠自身のことは完全に隠す。
追及されて辻褄の合わないところは、嘘の継ぎ接ぎで場を持たせる。
成り行き任せで始まった生活。
いつもと同じスタートを切って、大体はうまくいっていた。
それなのに香の存在が、獠の中に消化しきれない何かを、不快寸前の絶妙なバランスで貯めていった。
香との生活の中で、獠は胃もたれのような感覚を味わう。
香との距離感も獠の理想通りなのに、なぜか。
原因を探ろうとしても、獠は首を捻るばかりだった。
コメント
冴羽さんの思いの変化と夜の2人の会話が素敵です。読ませていただきありがとうございます。
嬉しいコメントありがとうございました。
イベントも始まりましたので、ぜひご参加下さい(匿名で参加可能です)。
naohn