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「いい年して、お盛んだねぇ」
麗華からの依頼はある人物の調査で、ビルの屋上で酔いが一発で冷めるほどの冷たい風を受けていた。
高層ホテルの最上階だから覗かれる心配はないと思ったのだろうか、ターゲットの老人は若い愛人とベッドでお楽しみ中だった。
大金を稼ぎそうな女の躰には一見の価値はあったが、獠にとってはAVと同じでしかなく、淡々と監視は続く。
― 愛してるわ ―
嘘と分かる表情で女が愛を囁く。
愛を告げられた老人の顔も「それ」を信じていないと語る。
(すっげえ空しい)
この寒空になにをやっているのかと自分に呆れつつ、愛しているという女に過去関係をもった女が重なる
あの頃の獠に愛の言葉は『煩わしい』ただそれだけで、獠にとって『愛している』は『さようなら』の合図だった。
それなのに
(香に好きだって言って欲しいなんて…馬鹿か、俺は)
自分の願望に呆れながら、読唇術で老人がピロートークで漏らす極秘事項を読み解いたあとに麗華に電話して仕事を終えて、首を竦めるとビルの屋上を後にした。
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