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「この先のこともあるし、俺たちのこと、みんなに言っておきたいと思うんだけど」
「恥ずかしいけれど、うん、大事なことだと思う。 揶揄われるとしてもルチアやイルマくらいだろうし」
「うーん、俺の場合はいろいろ揶揄われそう。兄上たちには散々”そんなんじゃない”って言ったから『ほらね』って顔されるんだろうな」
そのときのことを思い出したのかヴォルフが楽しそうにふふっと笑う。
「どうしたの?」
「あのとき君の『ヴォルフお兄様』にならなくて良かったなって」
「そうね。 でも、私は一人っ子だったから『お兄様』もいいなって思ったよ?」
「それなら直ぐにできるさ。 俺、侯爵家の四男坊」
ヴォルフの言葉の意味を考え、その金色の目が真剣であることに気づいたダリヤはこくりと喉を鳴らしてヴォルフと正対する。
「冗談ではないし、揶揄っているつもりもない。ただただ真剣に、その手首に”俺のもの”って印をつけて欲しいと願ってる」
「…ヴォルフ」
「遠征に行くときは君に【いってらっしゃい】と背中を押して欲しいし、先触れなど必要なくここに【ただいま】って帰ってきたい」
カタンと椅子の音を立てて立ち上がり、テーブルをまわってダリヤの横で膝をつく。己が映る瞳には真剣さと、金を溶かしたかのような熱と甘さが確かにあった。
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