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「泉田警部補!? 一体何をしているんですか!?」
振り返ると奴がいた…というほどではなく、特に上司と敵対はしていない、それどころか何処となく仲よさげなキャリアの警視がいた(名前は憶えていない)。
まあ、警視庁の目の前で起きている立ち回り。
その演者の一人が悪名高き「どら除けお涼」なのだから見物人は集まりやすい。また10人中10人の目を引く美女なので一般人のギャラリーもいらっしゃる。
彼もわざわざ見学に来たのか?
「状況は?」
「この通りです」
そうとしか説明しようがないこの拷…、尋問の現場をおさめに来た善い人かもしれない。
まあ、こんなのは日常茶飯事なので上司も俺も処理に慣れてはいるが、書類1枚書くのも忙しくなりそうなので代わってもらえるなら是非お願いしたい。
そして代わるなら早く名乗りでて、上司を止めた方が良い。
「絶対に話さないつもり?」
ああ、無傷でピンピンしている上司はその見事な脚線美を披露しながら暴漢Aと距離を取る。
「もういいわ」
恐らく、しつこく尋問されると思ったのだろう。
暴漢Aの顔に驚きと戸惑い、そしてニヤリと形容できる嫌な笑みが浮かんだのが見えてため息がでる。ため息は「遅かった」という諦観9割と1割の同情でできている。
「見せしめって大事なのよ」
暴漢Aから一歩分離れたところで上司のハイヒールが高く上がり、本当に男とは救いようのないものである、「下着が見えるかもしれない」と鼻の下を伸ばした暴漢Aのスケベ心が満たされる間もなく
「ぎゃあああああっ」
邪な考えを抱くもと、というか本能の源がハイヒールのヒール部分で踏みつぶされる。見慣れた光景ではあるが、何度見てもこっちがヒュッと縮んで寒くなる。
「さてお次は?」
「け、警察官がこんな、暴力、していいのかよ!?人権侵害だぞ!?」
「私に逆らう奴に人権などない!!」
暴漢Bは真っ青な顔をして創意工夫の無い台詞を吐くが、女王様のお決まりの台詞が轟いたため暴漢Bは簡単にペロッと吐いた。黒幕は予想通り。
やれやれ、と始末書数枚を負い浮かべつつも事件解決に思いきり体を伸ばそうとしたとき、
「涼子は相変わらずだな」
忘れてた…でも、涼子?
思わず隣を見てしまった視線に疑問符を乗せてしまったのだろうか。
「涼子とは、一時期だが付き合っていてね。 涼子が迷惑をかけているようで申し訳ないね」
丁寧な言葉の割にはこちらを値踏みする視線。
ああ、どうやらこの男は俺と涼子の関係を知って探りに来たらしい。嫉妬めいた視線はないので、出世の足掛かりを取っ払うためか…まあ、なにかも思惑があるのだろう。
あとはキャリアならではの何かしらの思惑で来たんだろうけれど、生憎、この手の挑発に乗るほどもう若くはない。
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