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「獠ちゃんって浮気しないの?」
「さあ」
ほんの悪戯心の質問だったが、獠のことだというのに他人事のように返す香のあっけらかんとした表情に、それを聞いた夜の蝶たちは騒めいた。
湿っぽい雰囲気が払われれば、次は恋バナの花が咲くのが女の園だ。その恋バナが、この街で注目度No.1のカップルのものだとなれば、店の中の蝶たちの仕事は上の空。
(これは仕事にならなさそうね)
そういってため息を吐くママの興味も香にすっかり向いていたのだが。
「香さん、気にならないの?」
「私と獠じゃ経験値が全然違うもの」
「浮気されても怒らない、ってこと」
「まさか、そんな聖母じゃないわよ。ただ獠が浮気しても私には分からないだろうなって思っているだけよ」
香の回答に、日々街中でナンパに勤しむ獠の思惑にうすうす気づいている夜の蝶たちは「獠ちゃん、良かったね」と安堵する。
「確かに獠ちゃんの女の経験値ってすごそう」
「すごいかどうか、比較対象がない私には分からないけどね」
あはは、と笑う獠に夜の蝶たちの考えがひとつにまとまる。結論、「あの獠を『最初の男』にした香は気の毒」ということ。
夜の蝶たちからしてみれば獠は典型的な『遊び相手ならば最高だけど本気になったらヤバイ男』。獠に捨てられれば他の男では満足できない可能性は大きい。本気になって溺愛された日には籠の鳥よろしく雁字搦め。
さて、香の未来がどちらになるのか。
ハンマー攻撃でナンパを止められて『香ちゃ~ん』とへらへらと笑いながら香を見る獠の瞳は、いつも執着の焔を静かに灯していることに気づく者は香の未来が予想できたが。
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