花 / シティーハンター

シティーハンター

シティーハンターの二次小説で、僚と香は恋人同士です。

美人刑事・野上冴子の妹・麗華が出てきます。

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「何で香さんなの?」

仕事のお礼をしたいと言うことで麗華に招かれたバーのカウンター。ずっとこの一言を言いたかったのか、やけにハイペースで杯を重ねていた麗華の理由に僚は内心苦笑した。

「酔ってるな?」

答えるつもりはない。だから”聞かない方がいい”と言外に響かせて忠告めいた声音で言えば

「…かもね」

全てを悟ったような諦観を滲ませながらも麗華は気丈に笑う。こういうところは冴子の妹だと、僚は”姉妹”という絆の深さを感じた。

「もう帰るわ…ごちそうさん」

麗華にこれ以上の惨めな想いは無用だから、僚はカウンターの中のマスターに目配せして店を出る。僚の縄張り内にあるこのバーで麗華が危ない目にあうことは無いから。

守りたいと思う、大事な仲間の一人だから。

(でも違うんだよなぁ)

香を見ると<自分のもの>だと僚の本能が訴える。その姿に、その声に、そのニオイだけに僚の本能が反応する。

香は僚の心の中で唯一咲く花。例えこの世界からその姿が消えても、その声が聴こえなくなっても、そのニオイが薄れてしまっても香は自分の心の中で決して枯れることはないと僚は確信していた。そして、そこに他の花が決して咲くことは無いことも。

まるでこれは呪い。

それでもいいやと思えてしまうほど、僚が自分自身も驚くほど狂おく愛おしく感じるのは香だけだった。

(大した女だよ)

美しい花はいくつも見てきた。麗華もその花たちのひとつであり、気軽な雰囲気ながらしっかりとした芯をもつ美しい花だと僚は思っている。

煌びやかに咲き誇る花たちのいくつかに僚は触れてきたものの、それらは全て僚の心の荒野に根付くことはなかった。

いつの間にか荒れ果てていた自分の心。僚自身も手を付けられず、やがて手を付ける気にならず放っておいた心の荒野に涙という水をやり、思いやりと気遣いで土壌を整え、せっせと自分の居場所をつくった香という花はここで永遠に咲くことを決めた。

物好きな花だと思っていたのに、僚は今やその花の守り人を買って出ている始末。

しゅんっとすれば必死に世話をし、笑う様に大輪の花を咲かせると嬉しくなって、危険が迫れば身を挺して守り続ける。

「あら、お帰り」

幾重にも仕掛けられたトラップの中で、ぬくぬくと暖められた部屋の中で花が咲く。ふわりと漂う花の匂い。まるで母の様に優しくて、そのくせ女の誘いかける艶やかさも混じっている。安心と興奮を誘う矛盾した匂い。

(さてどうするかな)

安心か興奮か。どちらの香りを選ぶかなんて世界で一番幸せな選択。自分で選びかねると、意外にも花の方が僚の幸福を願って道を指し示すから面白かった。

「お風呂なら溜まってるわよ?」

ほらこんな風に、と僚はにんまりと笑う。「入ってきたら?」と微笑む香からは洗い立ての爽やかなシャボンの匂い。にやっと笑って僚は足を一歩踏み出して

「香チャンがそう言うなら~~」

「はあ!?」

驚いた声を上げる香を、僚は一切構わず抱き上げたまま入ってきたリビングをさっさとでてバスルームに向かう。脱衣所で降ろすと花は牙をむく…こんな危険で挑戦を誘うところにも僚はやみつきだった。

「ちょっと、何考えてんのよ!」
「その予感で正解だぞ?」

僚は出口となる扉をその大きな身体で塞ぎ、顔を真っ赤にする香に構わず服を脱ぎ始める。現れた素肌にどきりとする香の挙動も御見通しで、ちらっと香を見た僚は誘うように笑いかけて

「飢えてんだから…さっさとしろよ?」
「…夕飯ならあるわよ?」

「そっちにじゃない…わからないフリは良くないぜ」

そう言った僚は身を屈め、視線を合わせた香に向かってニヤッと笑い

「洗濯が増えるけど、まいっか。香チャンは働き者だからね~」

そう言うと逃げようとしたパジャマ姿の香を抱えて風呂場の扉を潜った 。

END

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