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エンドロールが流れる画面を見ていたマヤがため息を吐く。
一種のトランス状態から抜け出して渇きを訴える喉を潤すために簡易キッチンに向かおうとしたらチャイムが鳴った。
時計を見て深夜であることを確認して身構える。
マネージャーならば事前連絡があるし、それ以外の来訪でもマネージャーの事前チェックが必ず入って連絡がないことはない。
(連絡がないってことは、目を盗んでここに来たってこと?)
足音を立てずにそっと近づき、ドアのスコープを恐る恐る覗き込んだマヤが息を呑む。そして慌てて扉を開けた。
「速水さん、どうして?」
「もう少し色っぽい逢瀬を楽しみにしてたんだけどな」
そういって長身を屈めた真澄はマヤの腫れたまぶたに口づける。
映画後半は泣きっ放しだったマヤ。その目はうさぎのように真っ赤で、途中で邪魔になったため前髪も雑にヘアバンドで上げたままだった。
「こんな時間だし、誰か来るなんて思わなかったんです」
慌ててヘアバンドを外して髪を整え、目元はしょうがないと諦めたマヤは真澄を部屋に招き入れる。
コートとスーツのジャケットをハンガーにかけた真澄はネクタイをくつろげ、一連の作業をじっと見ていたマヤの隣に腰かけた。
「疲れた」
パソコンで疲れた目に追い打ちをかけた深夜のドライブ。平日の深夜だったため空いていたのが唯一の救いだった。
「仕事は?」
「明日の15時までフリー」
「サボりですか?」
マヤの言葉に真澄は苦笑して、いたずらっ子のような眼をマヤに向ける。
「水城君の監視の目から逃れられると思うか?」
「あ、無理です」
だろ?と笑う真澄の顔にマヤはホッとする。安堵した心は素直な言葉を綴るもので、
「「逢いたかった」」
2人の口から素直に飛び出た言葉は二重奏を奏で、二人は顔を見合わせて同時に笑う。
マヤ、と真澄が呼ぶ声と同時に顎に細長い指がかかり少しだけ角度をつけられマヤの心臓がトクンッと鳴る。
「逢いにに来てくれてありがとうございます」
「どういたしまして」
真澄の優しい言葉と同時に甘い口づけがマヤに降り注いだ。
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