恋は十人十色 / セーラームーン

美少女戦士セーラームーン

美少女戦士セーラームーンの二次小説で、未来のクリスタルTOKYOの話です。

四天王×四戦士で四組は恋人同士という妄想で、ルナとアルテミスも出てきます(旧サイトにてLia様リクエスト)。

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「ああ、しまった!」

昼寝は猫の習性と解っているものの、

アルテミスは猫の身を少々恨めしく思いながらパレス内を飛ぶように走っていた。

- 今日は大切な日なんだからね! -

今日は遅刻厳禁の大切なお茶会で、

相棒の黒猫・ルナの怒った顔が浮かび思わず首をすくめる。

さっきは恨めしく思った猫の身に感謝しながら塀を飛び越え、

最短ルートに乗ってスピードを上げたとき

「よっ、アルテミス!」

「ネフライト殿……あなたも、か?」

「いや、俺は遅刻じゃない。ジュピターの手伝いをしていたんだ」

「なるほど…一瞬仲間意識が芽生えただけに裏切られた気持ちだな」

猫の姿でようやく乗り越える塀をネフライトは人の体で楽々乗り越える。

人型になるった自分には無理だろうと思いながら、

優れた身体能力を披露するネフライトに長い銀髪の男の影が重なった。

「またそんな顔をして…アルテミス殿が冷たいってクンツァイトが嘆いてたぞ」

「あの男が嘆くものか」

確かに誇張したけどな、と悪びれなく笑うネフライトに

アルテミスはバカバカしくなって警戒を解く。

前世の時代からアルテミスはこの男の気性を、

飾らない態度を好ましく思っていたのだから刺々しい態度も限界だった。

「ご主人様を盗られて拗ねているんだろ」

「拗ねてはいない…ただ」

「“ただ”?」

「………何でもない」

上手に男友だちになるこの男相手では何でも話してしまいそうで、

内心を吐露しそうになった自身を危惧したアルテミスは体の向きを変え

「僕はこちらから行く」

「おいっ!………ちっ、逃げやがった」

軽い身のこなしで去っていく白猫を見送ってネフライトは軽く舌を鳴らしたが、

その小さな背中が寂しそうに見えたから不満も苦笑に変わってしまう。

「あいつはずっとあいつのお姫さんを守ってきたんだからなぁ…クンツァイトも苦労するね、こりゃ」

月の女神セレーネの化身と謳われるほど清楚な美貌を誇った月のプリンセスと、

その姫を守る戦士たちのリーダーは愛の女神に相応しい輝くような美貌の戦士で、

ネフライトから見てもセレニティ王女やヴィーナスは美しかった。

しかしネフライトにはそれ以上に惹かれる女性がいた。

それは大柄で男勝りなところをコンプレックスに持つ、

ネフライトの前でだけ女になる可愛い女性だった。

「ジュピター!手伝いに来たぞ」

その彼女は”木野まこと”として月の王女と共にこの世界に生まれ変わり、

今はネフライトの傍にいる。

お茶会の会場の隣にあるまことの温室に足を踏み入れながら声をかければ、

ネフライトに向けられるのは”助かった”と言っているのが分かるまことの嬉しそうな笑顔。

この笑顔はネフライトにとって何よりも可愛くて、

この世の全てより愛おしくて、

それを見るたびに泣きたいほど幸せになった。

「なあ、ちょと味をみてくれないか?」

「俺が?俺の味覚よりジュピターの方が確かじゃないか」

「味見し過ぎて味が解からなくなった」

どれだけ気合入れてんだよ、と笑いながら差し出された小皿を傾け

「美味い!」

「本当か?…ネフライトは何でも美味いって言いそう」

「失敬な。ただお前の料理は何でも美味いってだけなのに」

そういってネフライトは笑い、

隣に立つまことの顎をクイッと持ち上げ軽くキスをする。

「な、美味しいだろ?」

「/// だから味が解からないって」

「じゃあ解かるまで続けるかい?」

もう、と言いながらもまことが近づいてくるネフライトを受け入れるように目を閉じかけると

「ジュピター、花器が余ってたら貸してくれ」

「「!!」」

突然のジェダイトの声に2人はパッと離れ、

まことが紅い顔を向けるとそれにつられる様にジェダイトも頬を赤く染め

「…っと……ごめん、邪魔して」

「いや…えっと、花瓶だよな?ちょっと待ってて」

バタバタと去っていくまことを背を見送ったジェダイトは、

深い謝罪を込めた瞳をぶすっと膨れるネフライトに向ける。

叱られた子犬のようなジェダイトの申し訳無げな瞳にネフライトは負けて苦笑した。

「仕方ないよな、もうすぐ時間だし」

「そう、もう時間がありませんのよ」

ネフライトの言葉に返ってきたのはレイの凛とした声で、

ジェダイトの後ろからレイが現れた。

「ジェダイト、このくらいで宜しかったかしら?」

「うん、手伝ってくれてありがとう」

レイの抱えたピンクのバラの花束にジェダイトは満足して頷き、

丁度戻ってきたジュピターから花瓶を受け取って立ち去る。

再び二人きりになったことを歓ぶネフライトの視線を背に受けながらレイはため息を吐き

「全く…殿方というのは本当にしょうもない」

「そういわれている僕も『殿方』だけどね」

「解かっていますわ。でもジェダイトはもっと大人です」

「君の前では大人ぶっていたいだけだよ」

本当は我侭な子どもなんだ、と

ジェダイトは少し瞳に野性味を加えてバラを抱えたままのレイにキスをする。

「…口紅がはげてしまいますわ」

可愛くない言い訳だとレイが後悔する前に、

ジェダイトは小さく笑って唇が触れる場所を変える。

ドラキュラのように白磁のような白い肌をした首筋に唇を寄せて強めに吸えば

「…今日は髪を結い上げているって分かってますわよね?」

「あ……ごめん、忘れてた」

項垂れるジェダイトにレイは小さく笑うと、

バラを一輪抜いてからジェダイトにバラの花束を押しつけて、

とったバラ一輪を長い黒髪にキレイに絡める。

そうして赤い痕はピンクのバラの影にひっそりと隠れた。

二人が顔を見合わせて楽しそうに庭で笑い合っていると、

クスクスとからかうような笑い声がして

「そんなところでイチャついていると噂の的になるわよ」

「! ゾイサイト!?」

顔を向ければニヤニヤ笑うゾイサイトと隣で顔を赤くした亜美、

そしてその他大勢のギャラリー。

何しろ二人がいたのは回廊の中心にあるバラ園で、

多くの窓から見えた美男美女のラブシーンに注目する目は多かった。

「早く会場にバラを飾りなさいね」

やれやれ、とゾイサイトは笑って窓辺から退き、

固まっている亜美の肩に手をあてて行こうと促しながらニッと笑いかけ

「でも…///」

「あっち見てもこっち見ても恋人同士だらけじゃない」

「あなたもそろそろあれくらい慣れなさいよ」

クスクス笑いながらそう言うと赤い顔でカチコチに固まる亜美の顎を、

いつもより強い力でクイッと持ち上げてキスをして

「そういう私たちもね」

「…はい///」

「まあ免疫がないのも可愛いけどね」

男心をくすぐるわぁ、とカマ口調のゾイサイトに亜美は力を抜いて安心したように笑う。

ふわりと微笑む亜美は水のように純粋で、

恋人同士になっても変わらず無垢だった。

そんな亜美に”男”として触れることが憚れるから、

男を隠してカマ口調でふざけ合う。

「ゾイサイト、遅れてしまいますね」

(まあ、限界を超えたら男になるけどね)

少し前を歩く亜美の背中にゾイサイトは内心舌を出すが、

ゾイサイトが男になる頃には少女も女になっているような予感がした。

「まったく夢中にさせてくれるわね」

多くの浮名を流してきたゾイサイトがやっと見つけたたった一人の女性。

その女性を追いかけて追いかけて、

時を超えてようやく捕まえた。

「この俺が女で苦労するなんてな」

そんな苦労も悪くない、そう思いながらゾイサイトは少し歩を早め、隣に並んだ亜美の肩を抱いた。

(……あいつも変わったな)

太古の王宮ではいつも手負いの獣のような目をしていたゾイサイトだったが、

今その瞳は穏やかなヴェールをまとっていた。

そんなことを思いながら柱の陰から出てきたクンツァイトは目の前の扉を叩く。

普段なら用のないリネン室だが、今は用事があった。

その証拠にクンツァイトのノックに応えるように中からコココンッとやや強く叩かれる音。

呼ばれたようだったからクンツァイトは扉を開けて

「………何だ?」

「遅い!チャックが引っかかって上がらない。手を貸して」

「何をやってるんだ」

「あんたが雑に下すからでしょうが!」

そうか、と納得しながら噛んだ布を丁寧に外してチャックを解放する。

ようやく見に付けられたドレスにホッとしたのもつかの間、

視線を胸元に下ろした美奈子の眉間に深いシワがよる。

そこには無数に赤い痕が咲いていた。

「…こんな恰好じゃ行けないんだけど?」

「解かってる。わざとやった。」

「何で!? せっかく今日のために買ったのに!ネックレスでも隠せないじゃない!」

そう言って怒る美奈子に、

それを予見していたクンツァイトは持っていた紙袋を無言で投げる。

何よ、これ?と美奈子は目で問う。

「こっちに着替えろ。それはもう着るな」

「何で?すごく可愛いじゃない」

「隙があり過ぎだ。それを着るのは許さない」

上からのクンツァイトの言葉に美奈子はカチンと来て

「あんた、私の何なのよ?お父さん?」

「親父が妬くか。恋人だから嫌なんだよ」

しれっと淡々とした声で返されれば激昂していた美奈子の頭も一気に冷える。

「…そう、か」

「そうだ。だから着替えろ……それとも着替えさせようか?」

そう言いながら、なぜかネクタイを外しながら歩み寄る男

「先に会場行ってて!!」

美奈子に力一杯押され、

リネン室から追い出されたクンツァイトは小さく笑うと

「早くしろよ」と閉ざされた扉に一声かけてその場を離れようとしたら

「クンツァイト」

足元から呼ぶ女性の声。

視線を下げて前方を見ればルナがいて

「アルテミスを見なかった?」

「いや? アルテミスがどうかしたのか?」

「アルテミスの寝ている部屋の時計を壊しちゃって…30分くらいずれちゃったの、前に」

「それなら会場で今ごろ一人で首を傾げいているんじゃないか?」

「…やっぱりそうよね」

ありがとう、と礼を言ったルナは会場となっている急ぎ足で庭園に向かう。

隣にあるジュピターの温室からはいい匂いが漂っている。

近代的な素材で作っているパレスの床。

昔のように石の湿った香りはしないが、

無機質な風景が月にあった王宮を思い出させる。

(昔もこうやってアルテミスを探したな)

月の王宮に務めていた二人は同じ種族で、

生まれたときからアルテミスはルナの許嫁だった。

名前さえも対でつけられた存在で、

ルナもアルテミスもその運命を疑問に思わずただ当然と受け入れていた。

仕えるプリンセスの夢見る恋のような思いはルナには非現実的過ぎた。

それほどまでにアルテミスは特に何も感じない相手で、

それが変わったのはアルテミスの目が違う女性に向いたときだった。

その女性は愛の星を抱き、

愛の女神の二つ名に相応しいほど美しく、

守護神のリーダーたる彼女のサポート役を担うアルテミスは常に彼女の傍にいた。

アルテミスが気づいていたかどうかは分からないが、

アルテミスは彼女を主人以上に、

彼女に恋い焦がれるように見ていた。

アルテミスがそんな瞳で見つめる彼女とルナは全く違った。

彼女のようになりたいと思っていても、

素直になれない心はアルテミスを怒ってばかりで

(あーあ、私ももっと可愛くなりたいな)

ルナの主人はいつも恋する可愛いお姫様。

その儚げな外見に似合わず強い心をもち、

理に負けず自分の想いに忠実で、

時を超えても変わらないほど一途な想いを抱く女性だった。

そんな主を見習いたかった。

そしてルナの主である月のお姫様は地球の王子に愛されていた。

彼女が彼に向けるのと同じくらい強い心で、

同じくらい一途な想いを向けられていた。

そんな主のように愛されたかった。

「ルナ!」

主人によく似つつもかなり幼い声に呼ばれて振り返ると、

ピンク色の髪を揺らしながら笑顔で走ってくる少女がルナの目に入った。

「スモールレディ」

「パパとママを知らない?」

なぜです?、とルナが首を傾げれば

「さっき急ぐアルテミスを見たの」

「…やっぱり急がせちゃったか」

「それで私も急いでここにきたんだけど」

「未だ時間じゃないので大丈夫ですよ」

安堵した笑顔、主人と同じ笑顔にルナの心が温かくなる。

この幼子はずっと見守っていた主の恋が結んだ実そのもの。

幸せそうな家族の姿を見られることがルナの慶びだった。

「一緒に待っていましょう。クイーンたちはすぐにお見えになりますよ」

頷いたスモールレディと一緒に歩く。

スモールレディは過去に出会った彼女と同じくらいの体に成長した。

それに嬉しくなったが、あのときいたダイアナがない。

ルナにはそのことが、まるで自分の恋だけ形を成していないようで寂しかった。

「ルナ、体調悪い?」

「いいえ、そんなことはないですけど?」

「アルテミスも心配してたよ。あ、そうだ」

そういって伸びてきた小さな手。

主人よりも小さいけれど同じ仕草で、

幼子の力で一生懸命抱き上げる。

「抱っこしていってあげるね」

「ありがとうございます」

ニコニコ笑う顔にルナの心が温かくなった瞬間

「でもルナ太ったね。すごく重たいよ」
「…やっぱりそう思いますか?」

「うん…運べるかなぁ」

不安げな声が的中。

バランスを崩したスモールレディの身体が大きく揺れて、

その腕に抱かれたルナの視界がぐるんっと回ったとき

「スモールレディ!」

「ルナ!」

スモールレディの体を支えるエリオスの腕と、

降ってきたルナの体の下敷きになったアルテミス。

「大丈夫ですか?スモールレディ?」

「う、うん…ありがとう///」

初々しい恋人同士の彼らが羨ましいけれど

「やだ、大丈夫!?アルテミス!!」

「…大丈夫だよ」

弱弱しく笑うアルテミスが愛おしく思う。

何しろこれがルナ自身の恋物語だったから。

「これも恋、あれも恋ってことよね」

恋は十人十色、この恋を大事にしようとルナは思った。

END

恋は十人十色 / セーラームーン

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