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自分勝手な理由で、彼女もそう望んでくれたけれど、<成長を待つこと>を要求した自分は自分勝手だった。

予想外だったのは、彼女の伸びしろ。

「髪は神に通じるんですよ」と言って、あの頃から伸ばしていたらしいキョーコの髪に蓮は指を絡める。

そんな蓮の仕草にキョーコは擽ったそうに、あの箱で思いを告げたときと全く変わらず羞恥で頬を赤く染める。

「君がおばあちゃんに、君なら可愛いおばあちゃんになっただろうけど、そうなる前にこうなれて良かった」

蓮の言葉にキョーコは目を見開いて、蓮の穏やかな表情を浮かべたキョーコの目が嬉しそうに細まり、満面の笑顔に変わる。

『どうしようもないほど好きだ』

「どうしようもないほど好きだよ」

テレビ画面の中の自分と同じ台詞を音にする。

あのときは理解できていなかった言葉だけれど、いまはきちんと自分の言葉として囁ける。

ガキだった頃の自分とは比べものにならない無限の想いを込めて音にする。

ありったけの優さを添えて、宝物に触れるように細心の注意を払ってキョーコは蓮に触れる。

『私も』

「私も」

 キョーコは前に一度この映画を見たことがあった。

19歳の蓮に愛を囁かれる女優を真似て、キョーコも表情を甘くする。

目の前にいるのは19歳の蓮の、未来の姿。

『あなたが、好き』

「あなたが、好き」

潤むキョーコの瞳に蓮の体が甘く疼く。

同時に胸の内には激しい嫉妬が起きる。

役に憑かれやすいキョーコ、それは才能だと思うが、いまのキョーコの目に映るのは「今の自分」か「過去の自分」か。

テレビのスピーカーから聞こえる女優の声より遥かに甘いキョーコの声が蓮の心を乱す。

この先の展開は覚えている。

それはキョーコも同じなようで、いつものキョーコにはない艶めいた表情で、擦り寄った体から伸びた腕が蓮の胸元に添えられる。

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