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少しでも落ち着こうと深呼吸して、蓮のニオイに深く後悔する。
それなりに時を共にして、蓮のニオイにアロマセラピー並みの癒しを感じたこともあったが、鼻腔内に入った空気が蓮のニオイしかないなんて過去にない。
それも爽やかな洗剤の香りと、野性味にある汗の香りのミックスで。
(うひいいいいいいいい///)
ヒトは忘れる生き物で、24時間もすれば物事の7割近くを忘れてしまうらしい。
忘れた記憶を呼び起こすキッカケとなるのが感覚。
特に嗅覚、つまりニオイで記憶が呼び起こされることは多々あるのだ。
しかし、「昨夜」から24じかんもたっていない現在。
ニオイで書く精した脳は昨夜の出来事を詳細に呼び起こす。
ー キョーコ ―
甘くありまがら揶揄うような蓮の声。
せつな気でありながら小僧のような蓮の瞳。
初めての痛み。
引ける体を抱き留めた力強さ。
(ど…どうしよう//////)
襲い掛かるのは凄まじい羞恥心。
穴がなくても、自分で掘って飛び込みたい。
「…もうお嫁に行けない」
「俺のところにお嫁に来るんだから問題ないよ」
「ほえ?」
突然蓮の声が降ってきた驚きでキョーコが顔を上げると、「おはよう」と超ド級の微笑みの爆弾が投下。
直下にいたキョーコの心臓はバックンバックンと過去にない爆音を立て、脳が熱膨張で破裂しそうになる。
「…死にそうです」
「そんなに無茶したかな? ああ……うん、したかもね。ごめんね」
「軽いです。 ”……”の間に思い出したこと全てを反省してください」
「反省する。 まあ、きっとこの先もやらかすけど」
「ここは日本です。 都合よく”コーン”にならないでください」
「うーん、でも夕べはキョーコが俺にしがみつきながら”コーン、コーン”って言ってたんだよ?」
「~~~~っっっ///」
蓮の言うことがいつなのか、キョーコの朧げな記憶では定かではないが、するりと腰を撫でられて粟立つ体にキョーコは息をのんだ。
そんなキョーコの女の反応に気を良くしたものの、キョーコの顔に残る気怠さを目に留めると、せっせと理性をねじって撚って「敦賀蓮」になる。
「俺も未だ眠いから、もう少し寝よう?」
「…起きたら、朝ごはんを食べたいです」
「俺が作るよ?」
「私が作りたいんです…二人分のご飯作るの、好きなんです」
キョーコの言葉に蓮は目を見開いて手で顔を覆い、しばらくして寝息が聞こえてくるまで紅い顔を隠す手を外すことはできなかった。
「…しびれた」
キョーコの寝息がゆっくりと深くなって、寝入ったと判断した蓮は体を起こす。
腕に走ったしびれが妙に甘かった。
極力スプリングを揺らさないようにキョーコから離れ、ベッドを降りて昨夜脱ぎ散らかしていく服を適当に身につけていく。
妙に気恥ずかしくて。
喉の渇きを言い訳にして足早に寝室を出て、駆け込むようにリビングに入ったとき
「うわっ」
昨夜濡れた髪からしたった雫でできたらしい水の溜まりに、柄にもなく足を滑らせた。
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