四つの恋模様【1】 ‐ prologue

四天王×四守護神

美少女戦士セーラームーンの二次小説です。

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戴冠式はいまクリスタル・パレスの神殿で行われた。

厳かな空気が神殿を包み、地球国最後の祭祀であるエリオスの祝詞が音楽のように奏でられる。

シャラン

金属の錫杖の音が青い空に溶け、片膝をつく衛とうさぎの頭上に光と共に降り注がれた。

シャラン……リーン

錫杖の音が変わったのを合図に衛とうさぎは立ち上がり、手に持った杖の先端を空に向ける。

衛の杖の先についた金水晶と、うさぎの杖の先についた銀水晶が太陽の光を受けて光り輝き、ラベンダー色のマントと白いドレスをはためかせた。

「ここに新たな王国『クリスタルTOKYO』の誕生を……え?」

エリオスの凛とした宣誓が戸惑いの音に変わったが、それを咎める者は誰もなかった。

誰もがその視線を衛の胸ポケットから溢れ出す白金の光に奪われていた。

「……セレニティ」

この事態を予期していた衛が苦笑して隣に立つうさぎに視線を向ければ、先ほどの女神と見まごうほどの神聖さがすっかり消えたうさぎがフフンッとしたり顔で笑って

「だって強情なんだもの…こうなったら力業よ」

そういって得意げに衛の胸ポケットを人差し指でツンッと突くと、まるでそれが合図だったかのように衛の胸ポケットから綺羅星のような光の塊が四つ飛び出る。

そして光は地面にぶつかる直前で弾け、成人した男性の姿になった。

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(こういうところはクイーンになっても変わらないわねぇ)

戴冠式の宴のあとにうさぎ主催でひらかれた内輪だけのパーティーの壇上、『復活☆四天王』と書かれた横断幕にせつなが微笑む。

せつなが視線を巡らすと、衛とうさぎを中心に、左右に分かれて立つ内部四戦士と四天王の間にある壁に苦笑する。

「かつての彼らもこんな感じだったのかしらね」

「彼女たちの魂の守り人になるほどだからな…昔の自分を見ているようだ」

せつなの言葉に応えたはるかの肩にみちるが手を置く。

外部戦士は悠久ともいえる長い間、たった独りで月の王国を外敵から守っていた。

それが使命だったから、遥か彼方離れたところにある月の女王と王女を想っていた。

”傍にありたい”という切望を必死に抑えていたことを、誰かと触れ合えることを渇望していたことを、気づかされたのはこの時代に転生してからだった。

「私たちはこの時代にそろって転生した…おそらくプルート、時や時空を操る君がそのように願ったからだろう」

「それがクイーンの、先代様の願いだったから。そして彼らの魂を眠りにつかせたのは恐らくネプチューンのやったこと」

「私が彼らの魂を眠らせ、再び肉体を与えて人間として再生させる役割をもっていたのは、はるか、いえ、ウラヌスだったのね」

「それをベリルが…いえ、クイン・メタリアが阻んだ。彼らの魂に残る月の力を感じて、あの者が彼らを再生してしまった」

ほたるが呟いた小さな声に、はるかが唇を悔し気に歪めたとき

「君たちはどこまで<前世>を覚えているんだ?」

突然背後からかけられたネフライトの声に、過去に没頭していて気配を感じなかった四人は揃って驚いたが、一足先に冷静になったみちるがにっこり微笑んで応える。

「あなた方よりも遥かに少ない…でも、あなたが想像するより少し多く」

「私たちは<忘れること>を望まれなかった、その影響だろう」

はるかの言葉に、そこに潜む棘を、ネフライトは苦笑して躱す。

そんなネフライトを見つめるほたるが静かに問いかける。

「全てを覚えていることは貴方たちの枷でしかない…なぜ貴方たちは<転生>ではなく<再生>を望んだの?」

「彼女たちの魂の守り人が必要だったから」

「嘘。 転生ならば先代様の力で十分可能、私たちがそうだもの」

「マスターは地球国の者だ。月の女王の力が及ばない可能性があった」

「嘘。  銀水晶の力は想いの力、あのクイーンがプリンセスの最期の願いを叶えないはずはない」

明らかに気分を害した風の戦士たちに、ネフライトは頭を下げた。

「すまない、いくら誤魔化しが効かないからといってクイーンの力を侮るような言葉は不適切だった」

ネフライトは困った顔で笑う。

「仮に<俺>が転生して、<彼>があの子とうまくいったら? それは<俺>にとっちゃ最悪のバッドエンドだ」

「では、ハッピーエンドとは?」

「もし許されるなら、<俺>が彼女の手をとりたい。 あのとき取れなかったあの手を、俺の手でつかみたかったんだよ」

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side クンツァイト

カラリと小さな音をたてながら大きな窓を開けてベランダに出る。

素足が感じるタイルの冷たさも、風が髪をたなびかせる感覚も久しぶりのものだった。

マスター、いや、キングによって俺たちはとりあえずパレス近くのホテルに滞在することになった。

キングの傍にいたものの眠っていた俺たちはクリスタルTOKYOに不慣れで、それを分かっていたキングはヴィーナスに案内を頼んだ。

『ヴィーナス』

愛野美奈子として生まれ、再びヴィーナスとして生きることを決めた女。

彼女たちはこの時代に人間として転生したものの、その魂に残った月の力により人間よりも遥かに長い寿命を持っている。

月の力は一般人にもおよびほとんどの者が長命にはなったが、それでも一般人と言い切るには不自然なほど彼女たちの寿命は長い。

「そんな理由がなくても、彼女の選択肢はいつも一つだ」

クイーンはヴィーナスに、ヴィーナスではなく愛野美奈子として幸せになることもできると選択肢を与えた。

キングによると彼女はクイーンの気が済むように一度は受け入れた振りをしたものの、あっという間にクイーンの元に戻ってきたらしい。

プリンセスを守る

それが彼女の唯一の選択肢

ここに俺たちを案内し、義務は果たしたとばかりに余計な話をせず、振り返ることなく去っていったヴィーナスの後ろ姿。

金色の長い髪が煌めく後ろ姿も変わらない。

室内に戻り、部屋に設置されたミニキッチンで手早くウイスキーをロックで用意する。

肉体を持つのは久しぶりだというのに、この手のことを体はしっかり覚えているものだ。

グラスを傾けて口腔を満たす芳香に満足し、再び窓辺に戻って都市を見下ろす。

昔の地球からは考えられない風景であるが、見上げた夜空で輝く月はあの頃と全く変わらない。

あれから人が変わるのに十分なときが流れた。

それでも彼女は変わらず月の姫を大切に守っている。

彼女のエナジーはあのときと全く変わらない。

― 我が主を害そうとする輩は誰であろうと赦さない ―

氷が解けてグラスの中のウイスキーに澱ができる。

その金色のきらめきが彼女を連想させるから、思わず小さな声で語りかけた。

「ならばお前は誰に守られる?」

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