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「寒いのかな?」
何か体にかけるものを探すために立ち上がりかけたとき、キョーコが甘えるように蓮の手を軽く握る。蓮は嬉しそうに笑って自分の体をくっつけて温もりを分けることにした。
小さな手だな、と自分の手の上に重なったキョーコの手を見る。
小さいけれどこの手のひらがとても器用に動くことを蓮はよく知っていた。なにしろいま蓮が着ている真っ白なセーター。前に並んだ大きなボタンが可愛らしいセーターは、キョーコの手作りの品だった。
「本当に、器用だよなぁ」
キョーコの手編みだというセーターは丁寧に編み込まれ、キョーコの性格を反映してか細かな紋様が並んでいる。
受け取ったときはこれが手作りだとは蓮には信じられなくて、まじまじと感動しながら子細に渡り観察してしまった。この行動をキョーコは誤解した。恋愛に関しては相変わらずネガティブなのである。
― 手編みなんて野暮ったいし…重たいですよね ―
キョーコによると、現場で一緒になった同年代の男性陣たちが『手作り』について、「重い」「ダサい」と言うのを聞いたらしい。
プレゼントを贈る習慣に慣れた蓮でも、プレゼントの送り主が謝るなんてレアなケース。そして聞いたキョーコの理由に苦笑してしまった。
「俺は恋人の手作りをイヤだとは思わないけど、まあ、キョーコちゃんの場合は彼らの言う手作りとレベルが違うよね。これ、プロの領域だよ」
デザイナーズブランドを数多く着こなす蓮でも着心地が良いと感じる。
長く着られるようにクラシックかつベーシックなデザインながら、可愛らしいワンポイントで個性を出している。
何しろ絶対視感をもち、骨のレベルで蓮の体のサイズを知るキョーコである。
セーターも蓮の第二の皮膚のようにしっくりと馴染んでいた。
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