男と女のリスク管理

スキップ・ビート!

スキップ・ビート!の二次小説で、蓮とキョーコは恋人同士の設定です。

未だ周囲に公表していない「秘密の」恋人のため、浮気など不誠実な真似はしないと思っていても不安はあるという状態をSSにしてみました。

キョーコの場合、雪花のときのように、手慣れている蓮の”過去のあれこれ”も気になるのではないかと。

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「京子って恋人はいるん?」

話しを振られた京子は表面は普通を保ちつつも、「来たっ!」と内心で首を竦めた。

タレントという立ち位置の所為か、バラエティ番組にも出演することもあるキョーコ。

同じ関西エリアの京都出身ではあるものの、大阪的なノリで際どいことを訊くこの手の番組は苦手だったが「これも仕事」と気合を入れ直す。

「残念ながら居ないんですよ」

秘密で付き合っている蓮のことを思い出し、同じ世界に生きているから理解されると解かっていても存在を否定するかのような言葉に「ごめんなさい」と内心で蓮に謝った。

「そうなんかぁ? おってもおかしくないやーん」

「今は仕事がとても楽しいので」

疑う目をにっこりと笑顔で撃退し「もったいないなぁ」と嘆く声を訊かない振りをするが

「じゃあ、いつかは?」

「そうですね。 良い人がいれば」

勘弁して下さいという想いが滲み出たのか、ちゃらけた表情をしているくせに「この辺で勘弁してやろうか」と目をした司会者は話題を変えた。

(助かった、のかな?)

人生の経験値の違いか、それともこの手のトークへの苦手意識が露見しそうになったのか。

嘘だとばれたな、と内心思いつつもキョーコは他の出演者が弄られるのを見ていた。

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「浮気、かぁ  ガッチャン …大丈夫ですか?」

突然リビングから聴こえたキョーコの言葉に、キッチンで珈琲を入れていた蓮は持っていたカップを落した。

大きな音に驚いたキョーコがキッチンにくると、蓮が新しいカップを取り出していた。

「浮気って…何?」

緊張で掠れる喉を叱咤しながら蓮が聞くと、キョーコは一瞬首を傾げて「ああ」と手を打った。

「今日の収録のテーマだったんです」

(…吃驚させないでくれよ)

にっこりと笑うキョーコの陰も無い表情に、蓮は内心で大きく詰めていた息を吐いた。

ここのところ二人そろって忙しかった。

『仕事だから仕方がない』と開き直ってはいないが、結局放っておいてしまった事実はある。

ようやく会えて顔を見れていなかった時間の長さを意識し、己の罪を見返した身にはいろいろ不安があるのだ。

(やっぱり一緒に暮らしたいな)

同棲願望を強く念じながら蓮は珈琲を注ぐ。

蓮の周りとグルグル回る珈琲の薫りのように、蓮は色々なシミュレーションをしてみたが

「やっぱり敦賀さんの淹れる珈琲は美味しそうです」

(まあ…今はいいか。かわいいし)

ぴっとり、という音が立ちそうなほどに隣にくっつくキョーコの温もりに、同棲願望は棚の上に放り投げた。

もちろんすぐ手に届く高さの棚である。

紳士面の奥にいる本当の蓮はそんなに我慢強い人間ではないのだ。

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「で、浮気がどうしたの?」

「浮気ってばれるんだな、って思ったんです」

「そりゃ……そうだろうね」

通信機器が進歩した昨今、やる気になればいくらでも浮気し放題。

内緒の相手との連絡ツールもたくさんあり、個人情報の保護が声高に訴えられているからパスワードやロック機能で家族間でも隠し事は容易である。

それでも浮気はばれる。

浮気の一番の敵と言えるのは「勘」。

特に女の勘は侮れないことを蓮はよく知っていた。

  - 何で分かるの? -

父が共演している女優から秋波を向けられると、母自身も多忙な身なのに、それがたった1回のわずかなものでも気づいた。

  - もちろん、彼のことを愛しているからよ -

無邪気な息子の問いかけにジュリエナは笑って答えた。

  - 女はイヤな予感には敏感なのよ -

そんなことを言っていた母だったが、彼女はいつも笑顔で父に対して揺るぎない愛情と信頼をよせていた。

それは父が常に母が不安になどならないように、上手にその愛情を伝えていたという証拠だと蓮はキョーコと恋仲になって知った。

(そんな二人の息子だっていうのに俺ときたら…)

過去の恋人たちに自分の全てを話したことはない。

蓮が自分自身に誰かを愛することを禁忌としていることは知らない筈なのに、全ての女性が『あなたは私を愛していない』と蓮の心の内を見透かして去って行った。

蓮が付き合った女性はみな最後には悲しげな眼をしていた。

付き合い始めて直ぐ、蓮が自分ほどに愛してくれていないことに気づいていたのだろう。

去ることをにおわせても引き止められないことを、去り際の瞳は薄々感じとっている徴があった。

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(敦賀さんっていっぱい恋人いたよね……何も言わないけど)

浮気の儚さを肯定する言葉を述べて以来黙ったままの蓮の目は何かを思い出していた。

その瞳から何となく”女”なのだと感じる。

女の勘はもちろんキョーコにも搭載されている。

(どうして別れたのかな…敦賀さんから振ったならいいな)

そんなひどいことを考えた自分の醜さに慌ててフタをして、思考でさえキレイ事で済まそうとする自分の事なかれ主義に嫌気がした。

(何で浮気の話しなんてしちゃったんだろ)

すぐ傍にある蓮の温もり。

寄り添っても、触れても、蓮は決して離れることは無く傍にある。

それは解かっている。

だけど、いま蓮の頭の中に他の女性がいることも解かっていた。

(一人……じゃないよね。絶対にたくさんの恋人たちを思いだしてる)

恋人として初心者のキョーコだけれど、蓮が経験豊富なのは何となく解かっていた。

キョーコに触れるときの仕草も力加減も、経験があるから上手に出来る。

かつてキョーコに憑いた雪花が吐き捨てたように、蓮の恋のテクニックは過去の練習に基づくものだった。

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(過去に嫉妬してもしょうがないのに…馬鹿だわ)

自分に嫌気がさしたキョーコはため息を吐く。

化粧直しでもして気分転換しようと立ち上がりかけたとき、蓮がキョーコの腕をグイッと引き

「本当に女性の勘はスゴイ」

気づけば蓮の腕の檻に閉じ込められていて、艶やかな声が頭上から降ってきた。

どこか嬉しそうな蓮の目が面白くなくて

「何のことですか?」

何も知らない。

何も気づいていない。

蓮の行動に戸惑ったふりをしてこの場を誤魔化そうとしたものの

「恋する男の勘を侮っちゃいけないよ」

ニコニコ笑顔の蓮。

その嬉しそうな顔が納得いかなくて、思わず眉間に深いしわを作って『何でそんなに嬉しそうなのか』と己の心のドロドロを嘲笑う蓮をキョーコはギンッ睨む。

「嬉しいさ。俺の過去に嫉妬したのって俺のこと好きだからでしょ?」

「…さあ」

「愛されていなきゃ嫉妬さえしてもらえないからね」

「私のことなら何でも分かるみたい」

「頑張ってるからね。俺のお姫様はあまり我侭を言うのが得意じゃないときた」

蓮が自分のことを解かろうとしてくれることにキョーコの心がほわっと温かくなる。

キョーコのことを解かろうとしてくれる人はこの世界に入るまで誰もいなかったから。

蓮と出会わせてくれたキッカケである尚に感謝しかけて、ふと自分が松太郎の浮気に全く気付かなかったことを思い出す。

「…ん?」

キョーコは初恋が尚だと思っていたが、本当にそうなのか?

憧れて理想の王子様像を尚に押し付けていたのでは?

だから尚自身は見ておらず、浮気を始め尚の色々にきづかなかったのでは?

(それだと、私の初恋って敦賀さんになるの?)

初めての恋人。

恋人繋ぎで手をつないだのも、恋人として好きの気持ちがこもったキスをしたのも蓮だけ。

そして蓮を想うと心に渦巻く清濁入り混じった感情。

キレイ事なんてない。

キョーコはいま人としての感情がむき出しの、切ったら血が吹き出そうな恋をしている。

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「キョーコ? どうしたの?」

名前を呼ばれて顔をあげれば、こちらを覗き込む蓮の優しい瞳。

全てを明かすのは恥ずかしいから笑って誤魔化しながらも、この嬉しさを伝えたいから蓮の首に腕を絡めて蓮の唇に優しくキスをする。

「キョーコ…」

キョーコの熱がうつったように、犯罪レベルの甘さの篭もった熱い声に名前を囁かれてキョーコは目をつぶりかけた。

しかし、己の耳と頬に優しく触れた大きな手の動きに、他の女で培ったテクニックがちらりと見えたから、

「…何で?」

蓮の視界で焦点がぼやけるほど近くに見える細い指。

キョーコの柔らかい唇に触れるはずだった唇には手の感触。

「今日はダメです」

(俺、何かしたか!?)

遠退いたキョーコの瞳には怒りがチリリッと燃えているのは分かったが、蓮には思い当たる節が全く無い。

無いから解決策もない。

さっきまで甘い瞳で自分を見上げていた凶悪な可愛さをもつ恋人の変化に蓮はオロオロした。

理由や原因を一生懸命探ってみれば

「慣れた感じが嫌、です」

『他の女で得た技術』と、以前キョーコが扮した雪花の台詞が蓮の頭をガンガンと強打して蓮は頭を抱える。

「……それも女の勘?」

「違うんですか?」

挑戦的なキョーコの瞳に蓮はぐうの音も出ない。

キョーコの女の勘は正確に動いている。

ハウツー本などこの世にごまんとあるが、蓮の恋愛テクニックは実地で磨いてきた。

(どうする? 過去なんて変えられないし………籠絡するしかない!)

今にも帰ってしまいそうなキョーコ。

今夜の独り寝を危惧した蓮はブワワワッと必要以上に自分の夜の帝王オーラを振りまく。

ひっとキョーコのひきつった声ににっこり笑い

「…キョーコ」

かつてないほど熱い甘さを融かした声で、姫が籠城しかねない高い頑丈な搭をぶっ壊し始めた。

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