誤解と墓穴 / 東京クレイジーパラダイス

東京クレイジーパラダイス

東京クレイジーパラダイスの二次小説で、原作終了後の竜二と司は恋人同士設定です。

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「竜二、このあと話があるんだけど」

「…明日でも良いか?」

「あー、もう何だってんだよ!」

竜二の返答に「別に構わない」と応えたが、

あのとき自分を見ようとしない竜二に司は不満だった。

苛立ちを発散できずに司は自室のベッドに飛び乗ると、

軟らかいベッドマットは司の細い体を受け止めると優しく包み込んだ。

(もう3…いや、4日か?)

最後にこのベッドで抱き合った夜を思い出し、

今ではもう自分の香りしかしない寝具に司は顔を歪める。

― 御無沙汰の理由? そりゃ<女>が別にできたに決まってる ―

誰のことかを伏せて一般論の態で設楽と向日に相談した司。

二人の回答に『アイツに限って』と言いたい気持ちもあったが、

過去を知っちゃっている身としては『やっぱり』と思ってしまった。

「別に…女、か」

仲悪いはずのふたりが揃えた回答は司の脳に響き続け、

司はそれを振り払うようにごろんっと仰向けに寝転がった。

(この世界のこと…確かに理解できてないけど、さ)

いつもボディーガードとして竜二の傍にいて、

九龍組の内部で司はすでに竜二の聖妻候補として認知されている。

それでも『恋人同士』かと問われると司は困った。

(そもそも”恋人”ってどうしたら恋人なんだ?…いやいや、ないない)

男として育てられたくせに脳内は意外と乙女な司。

波打ち際を追いかけっこして、

「こいつぅ♡」と微笑み交わし合う自分と竜二が浮かんで、

あり得ない風景の想像を追い払った。

「キスして…スルことシテ…じゃダメなのかな」

むぅっと悩む司が思い出したのは竜二の歴代の女たち。

近寄れば険悪だったものの何となく竜二にちょっかいをかけ続けた過去。

その最中に何度も竜二にぶら下がっている女の存在を問うたことがあった。

ベタベタ、チュッチュッと、

恋人でないとおかしい距離感だというのに、

竜二の答えはいつも「恋人ではない」だった。

― 好きよ、竜二♡ ―

― 竜二、愛してる♡ ―

彼女たちの紅の色も思い出せるほど幼少期の記憶は彩り鮮やかで、

過去のこととはいえ竜二と他の女のツーショットの記憶に司の気分が滅入った。

(”あれ”で恋人じゃないってなら…俺もそうじゃん?)

毛色の変わった自分が面白かったのだろうか、と

長くなった髪の毛を抓んで払った。

ムシャクシャした気分を追い払うため、

司はウエアに着替えてトレーニングルームに行くことにした。

そして照明のついた明るいリビングを横切ろうとしたとき

「急に悪かったな」

「いえいえ♡ 三代目のお呼びなら喜んで…何なら伽も相手もしましょうか?」

リビングから聴こえてきた竜二と女性の声に司の足が止まり、

色気たっぷりの竜二好みの女が竜二に手を伸ばす瞬間を目にしてしまった。

(…何だよ、これ)

湧き上がるべき怒りよりも衝撃の方が大きくて、

一歩退いた司の足元でキュッと運動靴のゴムが鳴いた。

第三者のたてた音に触れあっていた竜二と女が顔を向け、

竜二の視線と司の視線が絡まった。

「よお…悪いな、邪魔するつもりはなかったんだ」

竜二に司はふっと笑いかけ『ごゆっくり』ばかりに片手を上げて去ろうとしたが、

そんな司を竜二は腕を伸ばして捕まえる。

「そんな顔して…どうした?」

「へえ…俺の顔、見る気になったんだ」

「…司?」

「何だよ…俺のこと…ずっと避けてたくせに」

黙り込んだ竜二を目にして司はふっと笑う。

図星を刺されても見苦しく言い訳をすることはない、

そんな潔さがこんな時だというのに司は笑えた。

こんな竜二のことを見るたびに司の中の好きが膨れ上がる。

一人で悩む姿を見ると胸が苦しくなるし、

泣くのを堪えていると抱きしめたくなる。

身に受ける衝撃も心に受ける衝撃も、

竜二を傷つける全てを受け止めて癒してあげたい。

(あー、これが”アイシテル”ってことかぁ……ド修羅場で自覚するとは)

司が内心でどでかいため息を吐いたとき

「あら♡ どうやら三代目の気の回し過ぎだったようですわねぇ」

お色気ムンムンのわりに楽しげな声。

「この方、立派に”女”の顔をなさっているものぉ♡」

間延びした声とは裏腹に彼女はツカツカと司に歩み寄ると、

驚く司の頬をにっこり笑って優しく突き「やっぱり若い子の肌のハリは違うわぁ」と微笑む。

「ちゃんと三代目のこと受け止める覚悟をなさってますわ、それじゃあ私はこれでぇ♡」

楽しそうに腰をふりふり去っていく後姿に司は唖然とし、

判断に困ってい視線を竜二に向けるれば、

「親父の<コレ>だった女だ…全く冗談好きで困る」

そういって竜二は小指をたてる。

小指の意味が分からない司でもないが、

ポンッと脳みそに浮かべた先ほどの若々しい美女に素直に頷けず

「あれでもう還暦が近い」

「美魔女…?」

「魔女というより妖怪だな。若い男の取り巻きたちから生気を啜ってるに違いない」

竜二から得た新情報で唖然としながら司は彼女の後姿を見送った。

「最近アレの店の近くで気になる動きがあると報せに来た」

「あ、仕事?」

「まあ…でも、まあ、急ぎではない。それよりも重要なことができた」

「重要なこと?」

それだけ言うと竜二は司の肩を抱き寄せて、

司が小走りになるのも構わず長いストロークで部屋に向かう。

「竜…」

人が一人やっと通れるくらいの隙間に司をねじるように押し込んで、

そのあとを自分が続いて部屋に入り、

「なっ…」

戸惑いといささか乱雑な扱いに抗議の声をあげかけた司を壁に押し付けて、

開きっ放しの扉も気にせず唇を重ねる。

「…んっ」

その噛みつくような熱いキスに司は息をつまらせて、

己を窮地に陥らせる元凶と分かりつつも竜二の広い肩にしがみつく。

それから数分

司の鼻にかかった声だけが静かな空間に響き、

唇が離れたときには赤く腫れた唇から甘い吐息が自然と漏れた。

「ずっと俺のことさけていたくせに」

「さっきもそう言っていたが、俺は避けていない」

「嘘…っつ、んっ」

司の咎める声を竜二は唇で塞ぎ、

ほんの少しだけ唇を離すと

「自重していただけだ」

「…自重?何を?なんで?」

「”ナニ”を」

司の頭上に『?』が三つ並ぶ。

「何を?と聞いて、答えが何って…何言ってんだ?分からん」

「…ストレートに言わないと分からないか」

竜二の言葉に司は呆れたように首をフリフリする。

そんな司に呆れた竜二はため息を吐き、

「…」

司の耳元で”ナニ”が何なのか説明すれば、

次の瞬間には司は真っ赤になって

「セッ…///!?」

「ここまできたら単刀直入に言う」

「言うな!!」

「俺は毎晩、それも朝まで可能だ」

「無理だから!!」

「つれないことを言うなよ」

竜二はクスクス笑いながら脱兎のごとく逃げようとする司を捕まえて、

青い顔をする司にニヤッと笑う。

「一応お前に合わせて最初はゆっくりと思ったが」

「ぜひ合わせてくれ!」

「そうしてみたらお前に要らぬ心配をさせてしまっただろう?」

「もう心配しない!ノープロブレム!一切問題なし!!」

「いやいや、女の要望に応えられないなんて男の恥、分かってやれなくてすまなかった」

そういって竜二はニヤリと笑い、

司の両手を壁に縫い付けて口づけて、

司の悲鳴を丸ごと飲みこんだ。

「…もう、無理」

うめくような司の声に、

司の肌理細やかな背中と腰に指を滑らせていた竜二が顔を上げてニヤッと笑う。

「口をきく体力が残っていたか…まあ、逃げる体力はなさそうだがな」

竜二は暗闇の中でも迷うことなく、

ぐったりと脱力して無防備に晒された背中の汗ばんだ肌にキスを落とす。

「…ひぃん」

触れる唇の感触に長時間熱くさせられた司のカラダは素早く反応し、

思わず上がった甘い声に竜二の口元が緩む。

「全てを受け止めてもらえるっていいもんだな」

「これ…意味が違う…ぅ」

司のうめき声はやがて小さくなり、

しばらくすると寝息が薄闇を満たし始めた。

だから司は見られなかった。

竜二の顔が嬉しそうに緩み、

「俺の人生、まだまだ変わりそうだな」

珍しい竜二の声音も聞くこともできなかった。

もう一人で悩む夜は来ない

いつでも傍にいてくれる女がいる

ふっと小さく笑った竜二は司の汗で濡れた黒髪を額からのけて、

眠る司のカラダをギュッと抱きしめて眠りについた。

END

誤解と墓穴 / 東京クレイジーパラダイス

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