死がふたりを分けたら

シティーハンター

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まるで身体が腐るのではと危惧するほど、水に浸かっているような感覚が続くジャングルでの生活。

苛立ちに駆られて気を乱せば、それを狙いすましたように銃声が響いてすぐそばの樹で弾が爆ぜる。敵だと理解する前に動いた体は木の陰に飛び、顔を寄せた太い樹の幹からは強い緑のにおいがした。

盾となって獠を護るその緑の臭いは、いまも獠僚に絡みついていて…

「…っ」 

はっと我に返りびくりと震えた体に、獠はいつの間にか自分が眠っていたことに気づく。ソファに身を起こして時計を見ると、最後に時刻を確認してから30分ほど経っていた。

息苦しさを感じてシャツの首元を引っ張り、少しでも空気を吸いやすくする。緑のニオイじゃなくて、香の匂いで満たされた空気を思い切り吸って獠が安堵の息を漏らそうとしたとき

「…っ」

乾いた喉の痛みとは違う、キリリと喉を締め付ける感覚に獠は顔をしかめた。

それは見た夢のせいか、それとも蒸し暑い気候のせいなのか、喉が渇いた獠はやや乱暴に立ち上がってシンクに向かう。

蛇口を捻ると水がでる。

そんな単純なこと。日本なら普通のことにホッとする自分に苦笑して、長身を屈めると落ちる水道水を直接口で受け止めた。

喉が渇いていた。

コップの水じゃ足りない。

荒々しい何かが身をせりあがってくる感覚に、キュッと獠は蛇口を閉めて真後ろにある冷蔵庫からビールを取り出す。プルタブを引き上げて一気に流し込めば、炭酸の刺激が息苦しい喉に突き刺さった。

半分以上を一気に飲み干して一息つく。大分軽くなった缶を持ってリビングに行けば、窓から見える空は暗くなっていた。

やがて獠の予想があたって雨が降り出し、ガラスを辿る水滴を獠はぼんやりとみていた。雨はすぐにひどくなり、正面にあるミックの部屋の灯りがぼやけ始める。目を凝らしても窓ガラスの向こうは何も見えなくなる。

『シャワーカーテン』

その言葉通り霧雨はこの世の悪いものをそして良いものも平等に覆い隠す。

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