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( 香!! )
キャッツ・アイに向かって走っている途中で感じた香の気配に獠はホッとしつつも、香の安全を確実に確認するために走るスピードを上げた。
何より。勘が当たったことに安堵はしたが、未だ悪い予感が振り払えなかった。
雨の降る夜は人通りが少なく香を視認できる位置まで走りきると、通りの向こうに獠は香を見つけた。
香はかずえにもらった傘を子どもの様にくるくる回し、見慣れたレインコートを着て通りの角に立っていた。
塾帰りらしき子どもが子供が一人いる以外、誰も香の周りにいない。それに、獠の中に巣食っていた悪い予感は香を見つけた瞬間には消えていた。
獠の視線の先、すぐに香も獠に気づいて傘を持っていないない方の手を大きく振った。
「気付くのが遅いが…まあ、及第点だな」
獠よりもかなり悪い感度だが、最近周囲を探る訓練を始めた香の成果にそこそこ満足をする。
車道の信号が赤になり横断歩道の信号が青になるまでの間がもどかしい。
そんな余裕のない自分に笑う獠の視界で、香は『待ってて』とジェスチャーで伝えてきた。
(はいはい、待ちますよ)
獠は肩を竦めることで同意を示し、その後に青信号になると同時に走り出した香に顔を緩ませた。どうして此処にいるのか、と問う香の顔になんて言おうかなんて考えていると突然香の身体が光り輝いて…
そこから先のことを獠は覚えていなかった。
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