死がふたりを分けたら

シティーハンター

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温かいシャワーの雨に打たれながら獠は冷えた身体を温めていた。

ほんの少し前の悪夢のような映像が振り払おうとしても振り払えず、目を閉じて香の気配を探って安心する。同じことを何十回か繰り返してため息を吐いた獠はシャワーの湯を止めた。

タオルで頭をふきながらリビングに入るときに玄関に置かれた折れた傘が目に入る。

折れた骨に布がだらりとぶら下がり、哀しそうに涙を流しながら下に小さな海を作っていた。

「…獠」

リビングの扉を開けるとすぐ目の前に香がいて、僚は黙って申し訳なさ気な顔の上に乗った短い髪をくしゃりと撫でる。いつもの様に明るく茶化すことも出来ず、小さく笑うのが獠には精いっぱいだった。

冷蔵庫の扉を開けてビールを取り出し、プルタブを開けて飲もうとすると

「ごめんなさい」

細い腕が腰に回り、温かい身体が背中に触れて動くことが出来なくなった。

トクン トクンと心臓の筋肉が血管を送り出す音が聴こえる。それは香が生きていることの証 。だから

「生きているならいい」

香の身体が光り輝いた瞬間の恐怖。香を失っていたかもしれないその恐怖よりも生きていてくれたことに感謝をしよう。

「雨の日は気をつけろ」

 (雨にお前を奪われる …なんて言ったら笑われるな)

でもその予感がぬぐえなくて、獠は香の腕を腰から外すと身体の向きを変え、驚いて目を見張る香の顔に手を添える。

長身を屈めながら合う角度に香の顔を上げさせると、薄ら開いた唇に合わせ深く、全てを浚う様に口づけた。

安心させてくれ、お前が生きていることを。

実感させてくれ、お前は俺の傍にいるということ

 「そのまま…」

「…え?」

唇の角度を変える間に囁けば、甘い吐息で羽の様に軽やかなキスが続く。

「俺の首に腕回せ」

身長差を利用して僅かに香の身体が浮かせると、背中とひざ裏に腕を回して抱き上げる。

そしてまた重ねた唇で夜の始まりを合図する。

その合図に香は身を震わせたが、獠の首に回したその腕の力は緩まないから

「いい子だ」

唇の端で笑った獠は香を抱いたままリビングを出て行った。  

死がふたりを分けたら

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