名探偵コナンの二次小説で、新一×蘭、赤井秀一&宮野志保、降谷零&榎本梓です。
pixivで「秀志」「ふるあず」のCPに萌えて妄想しました。
シリーズになっています。
第一弾は降谷の想い人である、喫茶店ポアロの看板娘視点です。
スポンサードリンク
私、榎本梓は神に誓います。
私はただ軽い気持ちで発言しただけです。
話の流れも不自然ではありませんでした。
でも、いま息が詰まるほどの沈黙が私たちを包むのは私のせいです。
すみません。
まずは、10分前を振り返ってみましょう。
***
「こんにちは、梓さん」
開店時間に入ってきたのは常連の一人、宮野志保さん。
外国の血…えっと英国だったかな、混じりの、日本人離れした美人さん。
なんと彼女は灰原哀ちゃんの遠い親戚。
英国に帰ったというあの子が大きくなったら、志保さんみたいになったんじゃないかな。
「モーニングセットを、カフェオレでお願いします」
そう言って窓際のテーブル席、いつもの場所に座る。
テーブルの上に慣れた仕草で設置されるノートパソコン。
僅かに光る画面に照らされる彼女は、私には想像がつかないほど頭がいいらしい。
何しろ、まだ20歳にならないのに米国で大学を飛び級で卒業済み。
いまは東都大学で何かを研究していて、家から大学までの通り道にあるここで朝食を食べていくのがポアロの朝の風景。
カラン
カウベルが報せる次のお客様は、
「おはようございます!」
高校生探偵、おっと、今は大学生探偵だった、の工藤新一君。
一時期は『行方不明』なんて騒がれたけれど、事件が解決したとかで今はポアロの日常にいる。
ご両親が海外にいるので、彼はここで朝食を食べながら、ポアロの上階に暮らす毛利探偵の愛娘・蘭ちゃんが来るのを待っている。
そして、
「よ、宮野」
大学が一緒とかで志保さんとも知り合い。
工藤君は簡単なあいさつをすませてカウンターに座る、ここが彼のいつもの席。
「Good morning!」
流暢な英語が響き、眼鏡美女のFBI捜査官のジョディさんが入ってきて、その後ろから強面だけど優しい眼をしたキャメルさんが入ってくる。
「Hey, Cool Kid, Shiho」
ジョディさんは工藤君たちに挨拶。
どうやら彼らは皆で知り合いらしい、世間って狭い。
まあ、3人はなんかの事件で知り合ったらしい。
ここ杯戸町は信じられないくらい犯罪の発生率が高い。
ジョディさんたちはFBIなのに休暇でここにきたばかりに事件に巻き込まれ、解決しれど残務処理で日本滞在が伸びているらしい。
ホテルのバイキングに飽きたからって、警視庁に近いうちの日替わりモーニングを気に入ってよく来てくれる。
「おはようございます。今朝もにぎやかですね」
満面の笑顔と共に入ってきたのは蘭ちゃんで、蘭ちゃんの目線の先には工藤君がいる。
工藤君も優しい笑顔を浮かべていて「二人の世界~」だったけど、蘭ちゃんは後ろから来た人に気づいて我に返って店の入口をあける。
「Thank you」
流暢な英語を奏でるのは、何とも言えないイケメンボイスの持ち主、赤井秀一さん。
う~ん、私って声フェチだったのかなぁ。
長身の痩躯を黒いスーツで包んで、長い脚で店内を進みながらカウンターにいた私に注文を告げる。
ジョディさんたちに片手をあげるだけの挨拶をして、当たり前のように志保さんのテーブルに相席。
なにこれ、朝から映画鑑賞している気分
このヒーローはジョディさんたちの残務処理を手伝うために来日したFBI捜査官。
そして志保さんの従兄妹、らしい。
本当に世間は狭い。
赤井さんは来日当初はホテル暮らしをしていたらしいが、「ホテル暮らしは疲れる」といって志保さんのマンションに間借りしているらしい。
日本では異性が同じ屋根の下で暮らすと「恋人同士」「同棲」と思ってしまうけど、外国ではそんなルームシェアは普通なんだって。
まあ、ルームシェアだったのは昔の話みたいだけど。
「おはよう、志保。ここに来るなら起こしてくれれば良かったのに」
つい先日、赤井さんは志保さんの恋人に昇格したらしい。
志保さんは変わらずクールな目線だけど、赤井さんは明らかに目線に糖度が増した。
囁く声も蜂蜜がとろっと溶けたみたいに甘い。
園子ちゃんが言うところの『スパダリオーラ全開』。
朝から眩しい、直視できない!
それなのに私以外は全員通常運転。
スパダリオーラに直撃されている志保さんなんて平然として、
「心配性ね。でもここ”ポアロ”よ、警視庁御用達」
「確かに。だが、ここにはボウヤもいるんだぞ?」
赤井さんの言葉に「あ~」と全員の顔に納得という文字が浮かぶ。
当の”ボウヤ”こと工藤君は苦笑い。
「そんなに事件ばっかり起きるわけないでしょう」
自分でも事件遭遇率の高さ、つまり事件ホイホイの能力を自覚しているのだろう。
そう、今やポアロは世界一安全で、世界一危険な喫茶店となった。
思えば、華やかなメンツで私の気分は上がっていたんだな、うん。
「今ここに強盗が入ってきたらどうなると思います?」
話の流れで出てきた、特に何の含みもない台詞だったのに。
それが招いたのは、、、。
スポンサードリンク
「俺が強盗なら…ボウヤ、か……キャメルを人質にとるな」
沈黙を破ってまず響いたのは赤井さんのイケボ。
「ひどっ!」
「赤井さん、私はFBIの……のぉ」
赤井さんの言葉に二人は抗議の声を上げかけたが、全員の顔を見渡した彼らは諦めたように黙り込んだ。
え?
普通ね、人質をとるなら子どもや女の人じゃないの?
工藤君だって別に小柄じゃないし、キャメルさんなんて大柄。
アメリカのドラマじゃ違うのかな…人質も一緒に走らせる、とか?
「簡単な消去法だ。まず、私と蘭君を除外する」
「そうですね…、蘭はピストルの弾も避けられますから」
え、蘭ちゃん、そんなことができるの!?
空手ってすごっ!
「ジョディはすぐに弾をぶっ放すからな。私や蘭君相手ならば骨の1、2本折られる程度で済むが、ジョディ相手は命懸けだ」
…FBIってそんなに直ぐに撃つのね。
映画の演出だと思ってた。
「セオリーならシホかアズサだけど。シホに手を伸ばせばシュウに瞬殺されるでしょうし、アズサは…ねえ…警視庁が、ねえ…」
警視庁って、うちの常連の刑事さんたちのこと?
確かに御贔屓にしてくれてるけれど、そんな「黙ってない」ほどじゃないと思うんだけど。
「降谷君はキュートな顔して喧嘩っ早いからなぁ」
え、降谷さん?
私の頭に元アルバイトの安室さんこと、現在の名前が降谷さんの顔が浮かぶ。
降谷さんは<安室透>としてポアロに潜入していた警察官だった。
公安、とか言ったかな?
運転免許証に書かれてるなぁって程度の認識の、一般人の私にはよく分からないレベルの特別な部署の人らしい。
「そういえば、梓さん、どうして降谷さんのこと怒らなかったんです?」
「何で?」
「何でって、偽名ってことは『嘘ついていた』ってことです……よ、ねえ?」
なぜか蘭ちゃん以外にジト目を向けられた工藤君。
尻ツボミで、最後はごにょごにょッと言っていたけれど…何か、変かしら?
「名前が違うだけだし、ほら、結婚すれば名前も変わるでしょ?名前を変えても人が変わるわけじゃないし、ほら、名前を変えたい気分のときもあるだろうし」
静かに笑う赤井さんに思わず首が傾く。
「まあ、ね。『あの』彼の苦労が分かる様な気がしてね」
どういう意味か赤井さんに問おうとした瞬間、当の本人が登場。
噂すると来るって本当ね。
入口の扉があったところ、朝日を受けた降谷さんの蜂蜜色の髪の毛がキラリと光る。
安室さんのときはラフな格好だったけれど、今は明るいグレーのスーツを着ている。
相変わらずイケメンさんだ。
「おは、ようございます、梓さん。ブレンド、下さい」
息を切らせて、額に汗を浮かべてカウンター席に体を預ける。
仕事が立て込んでいるのかしら?
「隈ができてますけれど…寝不足なんですか?コーヒーならテイクアウトもありますよ?風見さんとかに頼んでみたらどうです?」
「いえ、少し体を動かさないと鈍るので……FBI、仕事が溜まってますよ?1日のほとんどブレイクタイムで、いつ帰国の目途がたつんです?工藤君たちも、そろそろ時間なのでは?」
降谷さんの言葉に、「やっべ」と言いながら朝食をかきこむ工藤君。
そんな工藤君は降谷さんにとって弟みたいなのかな、優しい目をして「しっかり噛んで食べるんだよ」なんて小学生相手に言い聞かせているみたい。
一方で、赤井さんとは性が合わないらしい。
「人生の半分がブレイクタイム、結構じゃないか。降谷君も仕事ばかりしていないでブレイクタイムを愉しんだ方が良い。ここなら風見くんも連絡のタイミングを読み違えないだろう」
「! 貴様、分かっていて」
赤井さんのシレッとした言葉に降谷さんが噛みつく。
最初は驚いたけど、これがほぼ毎日ともなれば慣れてしまう。
こう言われては嫌だろうけれど、赤井さんに吠える降谷さんは<お兄ちゃんにライバル心を燃やす弟>みたいで可愛い。
「私は君のやり方に同意するよ。しかし、やるなら『このくらい』やったらどうだ?」
そう言って赤井さんは志保さんに手を伸ばし、その細い手首にはまったブレスレットを指に絡める。
ゴールドのブレスレット、中央で光るのは紅い石。
「志保さん、素敵なブレスレットですね」
「ありがとう。これ、いろいろ便利なのよ?」
「全く、志保さんも大概ですね…本当にいいんですか?」
「必要だし、まあ、言いたくないけれど慣れてもいるしね」
ふうん……降谷さんにも、志保さんみたいな、アクセサリーを贈る女性がいるってこと?
それとも、志保さん自身に贈る、とか?
世間は狭いは未だ続き、降谷さんと志保さんも顔見知りだったらしい。
志保さんのお姉さんの幼馴染、だったとか。
降谷さんにとって志保さんの何かが優しい想い出に繋がるのだろう。
降谷さんは志保さんを特別な目で見ている。
そう、今この瞬間も志保さんに向ける目には優しい光が灯っていて、
「降谷さん」
私は降谷さんの視線の先を変えたくて、
「コーヒーと一緒にご飯はどうですか?」
うーん、接客マニュアルに載っていそうな台詞。
でも降谷さんの目は私に向けられた。
年の割に幼い顔の中でも特徴的な瞳の中に私が映る。
そのことが嬉しい。
そう、私は<この人>に恋してる。
安室透に恋をしていたのか、降谷零に恋をしたのか。
自分の心なのに分からないけれど、それが恋ってもんだよね。
私は<この人>がいると、「ああ、好きだな」って感じさせられる。
でも、これを口に出すことはない。
カウンターのこっちとあっちは、世界が違う。
私はこの煌びやかな世界に入れないから、あっちの世界に立つ彼への想いは片思いのまま終わるだろう。
「好きです」
「…え?」
「……よね、サバの味噌煮?」
「……ああ、はい」
降谷さんの目が私から少しずれて、今日のメニューが書かれたプレートに。
うん、スッキリ。
美味そうな味噌煮を選ぶので、許してもらおう。
END
コメント