名探偵コナンの二次小説で、新一×蘭、赤井秀一&宮野志保、降谷零&榎本梓です。
pixivで「秀志」「ふるあず」のCPに萌えて妄想しました。シリーズになっています。第五弾は赤井秀一視点です。
第一弾 看板娘の爆弾発言
第二弾 天才科学者のスパダリ
第三弾 平成のホームズの苦悩
第四弾 アドレナリン全開の警察官
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『降谷でも安室でも”好き”に変わりはない…という梓さんの真意が分からないのかしら』
本当にハニートラップの名手なの?、なんて。
そんなことを言われても俺は何とも言えない。
なぜならこれはスピーカーから聞こえてくる音声だから。
「今日の夕食はポアロですませるわね」との独り言は、梓君が言っていたことを思い出してヒートアップしていた。
彼女にとってこれは独りごとなのか、それとも会話なのか。
思案して、「?」がついていたので会話と判断してスマホを使って会話をする。
盗聴していること、盗聴されていることは互いに承知している。
組織にいるときから監視や盗聴は当たり前だったようで、盗聴されても気にならないと言っていたが、まさかここまで本当に平気とは思っていなかった。
つくづく人権を無視した組織だと痛感する。
壊滅させてよかった。
『あら、煙草休憩中なのね。これだから降谷さんに1日の半分がブレイクタイムって言われるのよ』
ピコンッとメッセージが届く音がスピーカー越しに届き、小さく笑う声が聴こえる。
思わず俺は手元の煙草を見つめ、ニヤッと笑って煙草をくわえて大きく煙を吸い込み空に向かって吐き出した。
可愛くキャンキャン吠える降谷君が煙の中に浮かぶ。
そうだ、降谷君といえば…。
思い出したことがあって俺はスマホで彼の番号を探し出す。
彼は連絡先の交換を至極嫌がったが(こういうところが構いたくなる要因だと思う)、「仕事のためです!我慢して下さい!!」と彼の部下に諌められてメチャクチャ渋々ですといった風情を隠さずに連絡先を交換した。
『仕事のため』で我慢を強いられるなんて日本は至極不便な国だと思う。
こんな国から志保を連れ出せて安心だ。
しかし、白いモフモフの子犬がアイコンとは意外だな。
『…なんだ?』
「志保を米国に連れて行く。本人の承諾は得ている。必要な手続きしてくれ」
『……………は゛あ゛!?』
ギャンギャン叫ぶ声を響かせるスマホのスピーカーから耳を離し、どちらかというとかわいい系のベビーフェイスが電話の向こうでどんな顔をしているのかと想像してしまう。
しばらく降谷君の興奮は治まらないと思ったので、今のうちに書類の整理をすることにした。
薬を飲まされて幼児化し、解毒剤を作れる志保に直談判にきた非常識な母親のせいで嫌いな書類仕事が増えたからだ。
― あなたも母親には適わないのね ―
父以外であの母に適う人間がいたらお目にかかりたい。
いまより未熟だったとはいえ俺と渡り合う武力はさることながら、あの胆力は一般的な女の範疇を余裕で超えている。
まあ、蘭君のように拳銃の弾を避けようなんて考える女子高生もいるのだし、『女』というものの認識を再度改める必要があると最近思わされているが。
しかし、胆力という意味では志保もいい根性をしている。
何しろ盗聴器と丸わかりのブレスレットを、嫌悪することなく好きなデザインといって礼を言って受け取るのだ。
そして24時間ずっと身につけて普通に生活している。
志保の監視は志保がFBIに勤務すると同時にやめることになっている。
本人はこのままでも別に構わないと言っているが、俺としては普段の会話ならともかく逢瀬を盗聴されるのはごめんだった。
まあ、志保はそこまで考えてなかっただけだが。
「ベッドの声まで聴かれるぞ」といったら顔を赤くしていたからな。
志保の赤い顔を思い出したら野郎の声ではなく志保の声を聴きたくなったので、意味のある言葉を吐き出さないスマホの通話をぶった切る。
降谷君は余計怒るだろうが、眼鏡の部下が彼を宥めて必要な書類を用意して手元に届けてくれるだろう。
やっぱり日本人は生真面目だな。
END
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