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「ごめん、俺、意地悪言った」
「いえ、そう言われる行動をとった私に非がありますから」
「あはは、やっぱりダリヤは格好いいな」
思わず「ヴォルフも格好いい」と言いそうになってグッと耐える。踏ん張れ、私。恋愛脳に負けてはいけない。
この想いはヴォルフを傷つける。
友だちでいようと言ったときのヴォルフの無邪気な笑顔を思い出せ、私に、前世も併せて恋愛などしてこなかった、恋など実は分かっていない、そんな私にヴォルフを傷つける資格はない。
- 真実の恋 -
そうじゃなければ、どんなに熱い想いもいつかは冷める。想いは変わる。変わりゆく思いは要らない。誰かを傷つけて結ぶ絆も要らない。
私は一人で大丈夫だ。
友だちもいるし、手に職もあり、家もある。一人で生きていくには十分だ。
大丈夫、私は間違えない。
間違いでヴォルフを傷つけたりしない。
止めていた右手を伸ばして、鉄の門を開ける。
「大丈夫です。 ちょっと最近、色々あって、正解が少し分かりにくかっただけです」
「正解は、見つかった?」
「はい、大丈夫です」
鉄の門が両側に去り、障害なしになったダリヤの顔にくっつくキレイな笑顔。
商会長として貴族と渡り合っているけれど、彼女は彼女のまま、ただ実直に向き合って縁をつないできただけ。つまりダリヤは嘘が下手だ。
大丈夫じゃないくせに、何が大丈夫なんだ。
「俺ってそんなに頼りにならない? 友だちなら頼りたいし、頼って欲しいし、それが好きな人なら尚更だ。俺は、ダリヤには俺を頼って欲しい」
「… え?」
ダリヤの顔に浮かぶのは純粋な驚き。俺に裏切られたといった嫌悪感は無いし、無理だという反射的な拒絶もない。
これなら遠慮しない。
遠慮してどこぞの馬の骨に奪われたら悔しくて悔しくて息もできない。
「ダリヤが好きだ。友だちとしてはもちろん、一人の人として尊敬してるし、部隊の一員として君のことを大事な仲間だと思ってる。このひとつ何も欠けられない大事なものだけど、俺は一人の男として、女性のダリヤを愛してる」
ー 友だちとしてですよね ー
ー 部隊の仲間としてそういってもらえると嬉しいです ー
此処に来るまで何十回も脳内で練習を積み、誤解されないようにしっかりと懸念事項を払拭して、しっかり「女性として愛していること」を伝えて反論を刈り取る。
全くスマートさがない告白だけど仕方がない。
貴族的な言い回し?
相手はダリヤだ、ダリヤに通じなければ優雅さなんて全く役に立ちやしない。
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